ジャイアントインパクト仮説では、約46億年前、地球に原始惑星テイアが落下し月が誕生したとされる。
ジャイアントインパクト仮説では、約46億年前、地球に原始惑星テイアが落下し月が誕生したとされる。 / Credit:Wikipedia
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太平洋にはジャイアントインパクトを引き起こした「原始惑星テイア」が埋もれている可能性がある

2021.03.31 Wednesday

月は火星サイズの「原始惑星テイア」が、原始地球に衝突して生まれたと考えられています。

これはジャイアントインパクト説と言われていますが、そのテイアが存在したという直接の証拠はまだ見つかっていません。

しかし、3月15日から19日わたって開催された第52回月・惑星科学会議において、アリゾナ州立大学の研究チームが、テイアの残骸が地球コアとマントルの境界領域に存在している可能性を示すモデルを発表しました

このアイデアは、以前からたびたび提案されていましたが、今回の研究はそうした証拠をまとめた初の包括的なモデルです。

この研究に関する論文は、科学雑誌『Geophysical ResearchLetters』でも掲載予定となっています。

 

 

Remains of impact that created the Moon may lie deep within Earth(Science) https://www.sciencemag.org/news/2021/03/remains-impact-created-moon-may-lie-deep-within-earth
GIANT IMPACT ORIGIN FOR THE LARGE LOW SHEAR VELOCITY PROVINCES. https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2021/pdf/1980.pdf

↓↓動画でも解説しています。

月の母の名を持つ原始惑星

初期の太陽系は混沌とした場所で、約46億年前に、生まれて間もない原始地球に、火星サイズの原始惑星が衝突しました

このとき、原始惑星は斜めに地球にぶつかったため、大量の残骸が地球の軌道上まで巻き上げられました。

この残骸はやがて集まって、それがになりました。

そのためこの原始惑星を、ギリシャ神話に登場する月の女神セレナの母親の名前にちなんで、「テイア」と呼ばれています。

これは月形成に関する主要な3つの理論のうちの1つで「ジャイアントインパクト説」と呼ばれるものです。

初期の地球にぶつかる原始惑星の想像図。
初期の地球にぶつかる原始惑星の想像図。 / Credit:canva

他にも月の形成に関しては2つの有名な仮説があり、1つはもともと地球と同時に、月が最初から形成されていたというもの。

もう1つは宇宙をさまよっていた天体が、地球の重力場に捕獲されて衛星になったというものです。

(現在のところ、この3つの仮説のうち、いずれが真実なのかを決定づける証拠は見つかっていません。)

ジャイアントインパクト説は人気のある仮説ですが、はるか古代に地球に衝突したテイアの存在を直接示すことはかなり困難だと考えられます。

しかし、もしそんなダイナミックな出来事が過去の地球で起きていたとしたら、地球とは組成の異なるテイアの残骸は、まだどこかに残っているかもしれません。

実はこの証拠となりそうなものを、地震学者たちは発見していました

それは地球の地下深く、コアとマントルの境界にありました。

次ページテイアの残骸はマントルにある

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