火星表面の模様が「可愛いクマ」にしか見えない
月を眺めると、その表面の模様がまるでウサギの形に見えることがあります。
これは「パレイドリア」と呼ばれる心理現象が原因です。
人は、関連性のないランダムな模様を見たとき、普段からよく知っているものに当てはめる傾向があるのです。
加えて、一度認識してしまうと、それ以外のパターンには見えなくなるという効果もあるようです。
人面魚や人面岩と呼ばれるものがたびたび話題に上るのも、こうした効果によるものです。
そして最近、私たちに新たなイメージを植え付ける「火星の画像」が共有されました。
おそらくこの画像の見え方に異論を挟む人は少ないでしょう。
誰がどう見てもまるでクマの顔面のようであり、テディベアのようなつぶらな瞳がこちらを見つめています。
この画像は、火星を周回している多目的探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」に搭載されたカメラ「HiRISE」が捕らえたものです。
2022年12月12日、MROが火星の約251キロメートル上空を飛んでいるときに、火星表面のクレーターとその内部の独特なパターンを見つけたのです。
研究者たちは、この場所を「古代のクレーター」だと推定しています。
もともとは通常のクレーターでしたが、内部が堆積物で埋まることで、「クマの輪郭」のような割れ目だけが残ったと考えられています。
また「クマの鼻と口」は崩れかけの丘であり、もともとは火山噴出口か泥噴出口だった可能性があります。
そして溶岩か泥が流出してクレーターを埋める堆積物となった後、噴出口が崩壊。現在のV字型が残ったのです。
最後に、クレーターが埋まってから長い年月が経った後、「クマの目」である2つの小さなクレーターができました。
全て偶然の結果であり、この画像も単なる「火星の表面」ですが、一度クマと認識してしまうと、それ以外には見えませんね。
実は、「何かに見える火星表面」は「クマの顔面」以外にも存在してきました。次項で紹介します。