おしっこの飛び散りを「50分の1」にする新型小便器が開発!
小便器を使ったことがある人ならば誰でも1度は、尿の飛び散りを経験したことがあるでしょう。
尿の発射スピードが早かったり命中場所が悪かったりした場合には特に悲劇であり、尿が便器の外に跳ね返って、ズボンや床を汚してしまうことがあります。
この不快な尿の跳ね返り問題は、人類が小便器を使うようになってから延々と続いており、現在に至るまで解決には至っていません。
そこで今回、ウォータールー大学の研究者たちは、人類の宿願となっている尿の跳ね返り防止を実現するために、新型小便器を開発することにしました。
開発にあたってはまず、剛体に液体が衝突した際に生成される飛沫の量を計測し、最も飛沫量が少なくなる衝突角度の探索が行われました。
その鍵となったのは、オス犬の排尿でした。
研究者たちは以前から尿の流体力学的な特性を研究しており、2018年に行われた研究では数理モデルを使って、小さなオス犬ほど排尿時に足を大きく開き尿の命中位置を高くすることで、自分の体を大きくみせようとしていることを突き止めました。
一方、自分の体にコンプレックスを持っていないオス犬の場合、排尿時に上げられる足は尿の跳ね返りを最小限に抑えるのに最適な角度(魔法の角度)になっていたことも判明します。
研究者たちは、このオス犬の排尿研究から得られた数理モデルを人間に当てはめることで、飛沫量を最も抑える尿の衝突角度の算出を試みました。
しかし数理モデルはあくまで犬の背丈と犬の尿噴出速度を基本としたものであり、人間に適応するには補完的な実験も必要となります。
そこで研究者たちは小便器がどれだけ尿を飛散させるかを測定するため、エポキシ樹脂でコーティングされたさまざまな試作小便器に、色素で着色した水を噴射する実験を繰り返しました。
(※外に飛び散った水の量は実験後に周囲をふき取ったペーパータオルの重量差で計測されました)
最後に研究者たちは、得られた計測結果を犬の排尿の数理モデルと組み合わせ、人間の胚尿にとっての最適解を算出しました。
結果、人間にも犬と同様に尿の飛び散りを最小化させる魔法の角度が存在しており、平均的な人間の場合、その角度が30度であることが判明します。
早速、研究者たちは得られた結果をもとに、人間がどんな状態で用を足しても、尿の衝突角度が30度に近づくような小便器の設計を開始。
いくつかのプロトタイプを完成させ、実践的な性能評価が行われました。
結果、研究者たちが新型小便器に最適だと判断したのは、上の図の右から2番目にある、オウムガイの貝殻のように細長い形状をしたものでした。
「ノーティルー(Nauti-Loo)」と名付けられた細長い小便器は、性能評価試験において尿の飛び散りが従来型の最大50分の1と、圧倒的な性能を誇りました。
また細長い形状は子供から背の高い大人までさまざまな身長の人間に対応しており、メンテナンス性にも優れています。
一方、純粋な飛び散り量だけで考えれば、中央の逆三角形の切り口をもったものが最優秀であり、ノーティルーの2倍の性能を発揮しました。
しかし逆三角形タイプは開口部が多様な身長に対応しておらず汎用性に欠け、メンテナンス性(掃除のしやすさ)も劣悪であり、次期主力小便器としては不適合との結論が下されました。
研究者たちは現在の標準的な小便器を細身のノーティルーに置き換えることができれば、トイレがより衛生的になり、清掃に必要な水や洗剤も削減され、持続可能なトイレとして環境に貢献できると述べています。