脳活動を測定するだけで「性格の類似性」を調べられると判明!
多くの人々は、結婚相手や友達になれるかの条件として、性格の一致を重要視しています。
しかし私たちが一般的に認識している「明るさ」「誠実さ」「協調性」などの性格特性が、いったい何によってうみだされ駆動しているかは、詳しくわかっていません。
脳損傷などによって性格が変わってしまった事例が多くみられることから、特定の脳領域が性格に関与していることは明らかです。
しかし明るい性格を持つ2人が、同じような脳活動パターンによって「明るさ」を生成しているかは謎でした。
そこで今回、コロンビア大学の研究者たちは、同じ性格特性を持つ人々が同じ脳活動パターンを持っているかを調べることにしました。
調査に当たってはまず被験者たちの性格特性を確かめるための心理テストが行われ、続いて動物・料理・自然の風景など、感情をあまり刺激しない存在を映した静止画や動画をみてもらい、そのときの脳活動パターンをMRI(核磁気共鳴法)とEEG(脳波測定法)で記録しました。
結果、性格が似たひとたちは同じ静止画や動画をみたときに、同じような脳活動パターンをとることが判明。
特に、想像力(開放性)、生産性(良心性)、エネルギー(外向性)、抑うつ(神経症)などの性格特性は、脳活動パターンの一致と強く関連し有意な数値を記録しました。
またこの効果は極めて強固であり、脳活動パターンは性別の一致や民族性の一致、政治的信念の一致よりも、性格の一致と強く結びついていることが発見されました。
この結果は個人の性格特性が、脳内に存在する同じ神経基盤から生成されている可能性を示唆します。
一方で興味深いことに、美的感覚については逆の負の相関にあり、同じ美的感覚を持つ人同士では脳活動パターンが大きく異なることが判明しました。
この結果は美的感覚を発生させている脳活動パターンが、人によって大きく異なる脳回路に依存しており、美的感覚は性格特性よりも複雑な過程をへて生成されている可能性を示します。
これまでに行われた研究では、脳の解剖学的な類似点(たとえば特定の脳領域の大小)が特定の性格特性に連動していることが示されていましたが、今回の研究では脳活動パターンという、より本質に近いレベルが性格特性に連動していることが示されました。
ですが今回の研究のより注目すべき価値は、応用性や発展性の高さにあると言えるでしょう。
脳科学の専門書として有名な「 The Psychology of Technology」と「Consumer Neuroscience 」の著者たちは今回の研究結果を応用すれば、脳活動を測定するだけで、個人の性格特性が丸裸にできる可能性があると述べています。
たとえば、膨大な数の被験者たちにヘッドセットをつけて画像や動画、音楽などのコンテンツをみてもらい、その時の脳活動パターンのデータを蓄積しライブラリーを作ることができれば、脳活動パターンを調べることで、会ってもない人の性格特性を予測できるようになるでしょう。
そうなれば、性格が一致するひとだけをマッチングする、脳神経科学にもとづいた婚活アプリなども開発できるかもしれません。
しかしこれら性格特性を記録したデータセンターにサイバー攻撃が起きた場合、膨大な人間の「性格」がネット上に流出するといった、これまでにない種類の個人情報の流出も起こります。
銀行口座や携帯の電話番号は変更することで対応できますが、性格を変えることは基本的に不可能であるため、社会的影響はより恐ろしいものになるでしょう。
今回の研究結果が非常に応用性と発展性に富んだ素晴らしいものであるり、学術的価値も極めて高いものなのは間違いありません。
しかし社会を変えるような優れた研究成果を普及させるには、同時に安全対策の開発も重要になってくるでしょう。