ありふれた雑草がコカインを作り始める
オリジナル植物が薬用成分の合成に使う「遺伝子セット」をより大量生産に適した植物に導入すれば、生産コストを大幅に削減できるようになるでしょう。
しかしこの技術は本質的に、コカの木を栽培せずにコカインを生産することを可能にします。
そのためコカイン生合成の「遺伝子セット」がタバコやトウモロコシなど大量生産可能かつカモフラージュ可能な植物に導入された場合、取り締まる側は見分けるのが非常に困難になります。
全ての農作物にPCR検査を義務付けることである程度の対応は可能かもしれませんが、個人の庭にはえているありふれた雑草や花壇の花、室内の観葉植物などにコカイン生合成を促す「遺伝子セット」が導入された場合、摘発は絶望的となるでしょう。
ただ、生合成過程を調べて「遺伝子セット」を開発する技術がもたらす恩恵は、違法薬物の生産リスクを上回るものなのは確かです。
薬用成分の生産過程の解明が進めば、オリジナルの薬用成分意外に、人工的にデザインされた医薬品を植物に大量生産させられるようになるからです。
もし将来的に「頭痛薬を含む野菜畑」や「HIVワクチンを含む水田」「がん治療薬を生産する水耕農場」など、あらゆる医薬品を植物で生産できるようになれば、多くの人々を救うことができるでしょう。