睡眠時に血流の約90%が減少していた!
フライシュマンアマガエルモドキは体長2〜3センチ程の小さな種で、夜行性のため、昼間は葉っぱの裏に張り付いて身を隠しています。
半透明な皮膚にある緑色素のおかげで葉っぱに上手く溶け込むので、パッと見ではどこにいるか分かりません。
さらに研究チームは、本種のカモフラージュ能力が他のグラスフロッグに比べて、優れている点に気づきました。
彼らは覚醒時から睡眠時に移行することで透明度を格段に高めていたのです。
確かに、いくら皮膚が半透明でも、中の血流や臓器は透けてしまうため、無防備な睡眠時はやはりリスクがあります。
しかし本種は寝ているときに透明度をアップさせることで、その難点をクリアしていました。
これは実に不思議なことです。
なぜならグラスフロッグにおいては普通、体内を常に循環している赤血球が全身の透明度を落としてしまうからです。
そこで研究チームは、野生のフライシュマンアマガエルモドキ11匹を採集し、このトリックの解明に乗り出しました。
実験では、覚醒、睡眠、運動、麻酔時など、様々なシチュエーションにカエルを置いて、そのときの透明度を測定。
その結果、覚醒、運動、麻酔時の透明度はほぼ変わらなかったのに対し、睡眠時は透明度が34〜61%も高くなっていたのです。
透明度の差の原因は、体内を循環している赤血球の大幅な減少にあることがすぐに判明しました。
こちらの写真をご覧ください。
Aは下から見たカエルで、右が睡眠時、左が覚醒時。Bは上から見たカエルで、右が睡眠時、左が覚醒時です。
これを見ると、睡眠時に血流が減少して、透明度が増しているのが分かるでしょう。
さらに詳しく調べてみると、カエルの血流の最大89%が入眠した直後に肝臓へと集中し、寝ている間はその中に封じ込められていました。
そのおかげで体内を巡る赤血球がほぼなくなり、皮膚が可視光線の90~95%以上を透過できるようになっていたのです。
そのため、他種のグラスフロッグのように、血流が透けて見えたり、日光でシルエットが浮かび上がることもなくなっていました。
これが昼間でも安心して寝られる理由だったようです。
こちらは、睡眠時と覚醒時の血流の違いを拡大した映像。
加えて、目を覚ましたカエルたちは、肝臓から血液が正常に循環し始め、何のデメリットも受けずに通常の活動を再開していました。
他の臓器や細胞にダメージを与えている様子もまったく見られません。
このように、睡眠中の血液循環を90%近くも減らしながら、体への損傷もなく、すぐに正常な状態に回復できるメカニズムは不明です。
研究主任のカルロス・タボアダ(Carlos Taboada)氏は、このプロセスには人間の健康に役立てられる秘密が隠されているかもしれないと考えまていす。
「血液を凝固させることなく、自由に肝臓の中に封じ込めたり送り出したりできるのは、そのプロセスの間に血液の凝固に対する何らかの修正が加えられている可能性を示唆しています。
これは血栓症や脳卒中を予防する新たな方法の発見につながるかもしれません」