「牧草地×ソーラーパネル」が羊を元気にする
放牧されるヒツジは、新鮮な空気と適度な運動によって、健康的で丈夫な身体に育ちます。
ストレスフリーな環境で、自由に牧草を食べることができるのです。
しかし、これを行うには広大な牧草地が必要です。
そして分野は異なりますが、同じく広大な土地が必要なものとして、「ソーラーパネル」が挙げられます。
十分な電力を生み出すには、広い範囲にソーラーパネルを設置しなければいけないのです。
もし、この2つを組み合わせることができれば、土地面積を有効活用できるでしょう。
そこでカンファービーク氏ら研究チームは、牧草地とソーラーパネルがうまく適合するか調査することにしました。
実験は、平均気温17.5℃の秋から冬にかけて、アメリカ・カリフォルニア州の牧草地で行われました。
80頭のメスのヒツジを、「ソーラーパネルが敷地面積の60%分設置された牧草地」と「ソーラーパネルがない従来の牧草地」に振り分け、行動の違いを観察したのです。
その結果、ソーラーパネルが設置された牧草地のヒツジは、放牧された時間の70%以上をパネルの下で過ごしていたことが明らかになりました。
そして従来の牧草地のヒツジと比べて、横たわっている時間が70%以上多くなりました。
ヒツジたちは、ソーラーパネル下の日陰で休憩することを好んだのです。
またソーラーパネルがあることで、ヒツジたちは牧草を8%多く食べることも分かりました。
この結果について研究チームは、「熱ストレスに弱いヒツジが、ソーラーパネルの日陰で十分に休むことで元気になった」と考えています。
そしてチームは、(カリフォルニアとオランダでは気候が異なるものの)過去10年間の気候変動によってオランダの家畜の死亡率が大幅に増加したことに類似性を見出しています。
加えて、ソーラーパネルがあることで、牧草地の草は栄養価(タンパク質含有量)が高まり、消化しやすくなりました。
これは、ソーラーパネルが強すぎる日差しを遮ることや、結露によって周辺に水分が供給されることが原因だと考えられています。
ちなみに、ヒツジの存在はソーラーパネル(人間)側にもメリットをもたらします。
ヒツジがいることでパネル周辺の雑草が伸び放題になることを防げるというのです。
また芝刈り機を使用しなくて済むので、山火事のリスクも軽減されると言われています。
牧草地とソーラーパネルは何とも不思議な組み合わせですが、いろんな方面に良い効果があるのですね。
今後研究チームは、暖かい季節にこれらの傾向がどう変化するのか調査する予定です。
比較的涼しい季節でもヒツジが元気になったため、春や夏ではさらに良い効果が望めるでしょう。