サザンレジデントシャチが減少する大きな要因は「近親交配」だった
分析の結果、近親交配がサザンレジデントシャチを脆弱にしていることが明らかになりました。
彼らは他の集団との交配を頑なに行わないため、近親交配による病気やその他の問題にかかりやすく、早死にしていたのです。
通常シャチは約10歳で生殖を開始し、20代前半で生殖の最盛期を迎え、40歳まで生殖を続けます。
しかし近親交配を重ねたサザンレジデントシャチは、そうでない個体と比べて、40歳まで生き残る可能性が半分以下だと判明しました。
実際、近親交配を行わないメスのシャチが一生の間に平均2.6頭の子供を産むのに対し、近親交配を重ねたメスのシャチは短命で、平均1.6頭の子供しか産んでいませんでした。
動物の個体数が安定または増加するための条件が、「メス1頭につき2頭以上の出産」であることを考えると、サザンレジデントシャチが年々減っているのも納得できます。
また2018年の調査では、当時のサザンレジデントシャチ76頭のうち、繁殖していたのは26頭だけだと判明していました。
しかも1990年以降に生まれた子供の半数以上の父親は、たった2頭のオスでした。
こうした偏りも近親交配のレベルを高めていると考えられます。
もちろん、研究チームが指摘するように、サザンレジデントシャチの個体数減少には、餌であるサケの量の変動や有害汚染物質、船舶による騒音ストレスなども関係しています。
それでも過去数十年の環境条件を学習させた「予測モデル」に、サザンレジデントシャチの近親交配のレベルを下げて適用すると、将来予測される個体数がマイナスからプラスに転じました。
近親交配だけが個体数減少の原因ではありませんが、その影響力は大きいのです。
今回の研究から、シャチの世界でも人間と同じく、近親交配をタブー視することが種の長期的な繁栄をもたらすと分かります。
科学者たちはなんとかこの集団の絶滅を避けたいと考えており、「他のシャチとの交配を拒むサザンレジデントシャチの近親交配をどうやって防ぐか」という非常に難しい問題を抱えることになったようです。