高性能な目と猛毒を持つ「ハコクラゲ」
海を漂う透明なゼリー状の生き物「クラゲ」には、人間や他の生物が持つ脳がありません。
それでも「眼点」と呼ばれる目をいくつか持っており、クラゲの傘の縁や、触手の付け根などに並んでいます。
脳が存在しないため、人間のように目で捉えた情報を脳で処理することはできませんが、わずかな光を捉えて周囲の明暗をいくらか感じることはできると言われています。
一般的なクラゲの目には、その程度の性能しかありません。
しかし、「ハコクラゲ」は、網膜や角膜、水晶体を備えた「画像を形成できるほど高性能な目」を持つことで知られています。
もちろんハコクラゲも脳を持たないため、脳で画像を処理することはありませんが、その高性能な目で明暗を感知するだけでなく、特定の光点を見分けることができると考えられています。
この特性はハコクラゲの生息地とも関連しています。
ハコクラゲは、広々とした外洋に生息する他のクラゲたちとは異なり、障害物が多い浅瀬に生息する傾向にあります。
そして科学者たちはこれまでに、ハコクラゲがマングローブ(海水と淡水が混ざり合う汽水域に生える植物の総称)の密集する湿地をスムーズに泳ぐのを見てきました。
しかもハコクラゲは、獲物が来るのを受動的に待つのではなく、積極的に狩りを行ったり、交配相手を正確に識別できたりします。
視界の悪い水域だからこそ、その高性能な目が役立っているようです。
またハコクラゲは、激しい痛み、意識障害、呼吸困難、心停止を引き起こす強力な毒を持つことで人々から恐れられてきました。
実際、ハコクラゲに刺されて人間が死亡したというニュースがたびたび報道されており、年間数十人もの人々が犠牲になっています。
そんなハコクラゲは、これまでに約50種の存在が知られてきましたが、この度、香港で新種が見つかったようです。