香港の湿地で「24個の目を持つハコクラゲの新種」が発見される
新種のハコクラゲが見つかったのは、マイポ自然保護区の水域です。
マイポ自然保護区は、香港の北西に位置する自然豊かな湿地であり、淡水池や干潟、マングローブ、ヨシ原などで構成されています。
「鳥たちの楽園」とも呼ばれており、様々な生物が生息しています。
研究チームは、そんなマイポ自然保護区の中でも、エビや魚の養殖に使用される水域から、クラゲのサンプルを収集。
その中にハコクラゲの新種を発見したのです。
この新種は、トリペダリア(Tripedalia)属の3番目の種であり、発見された地域の名を取って、「トリペダリア・マイポエンシス(Tripedalia maipoensis)」と名付けられました。
無色透明で平均体長は1.5cm。箱形の傘の四隅には、長さ10cmほどの触手がそれぞれ3本あります。
そして各触手の根本部分には、ボートのオールに似た平らな構造を持っており、これが強い推進力を生み出すのに役立っているのだとか。
またトリペダリア・マイポエンシスも、他のハコクラゲと同様、24個の目がありました。
まずトリペダリア・マイポエンシスの傘の4辺には、それぞれ「ロパリウム」と呼ばれる感覚構造のグループが存在しています。
そしてこのロパリウムには、「上部レンズ眼」1つ、「下部レンズ眼」1つ、「ピット眼」2つ、「スリット眼」2つの合計6つの目が含まれています。
トリペダリア・マイポエンシスの体にこうしたロパリウムが4つあるため、合計24個の目が存在することになるのです。
そしてこのうち「上部レンズ眼」と「下部レンズ眼」が高性能な目です。
これまでの研究によると、水面を見上げる上部レンズ眼が、水上の世界から光を集めており、これがマングローブの枝や葉などの存在を見つけるのに役立っていることが示唆されています。
また下部レンズ眼は水中の障害物を判断しているようです。
「ピット眼」や「スリット眼」は、他のクラゲが持っているものと同じく性能は高くはありませんが、周囲の明暗を検出できます。
そしてこれらの情報は、各ロパリウムにある約1000の神経で処理され、トリペダリア・マイポエンシスの行動に影響を与えるようです。
研究チームは、クラゲの中でも特殊なハコクラゲの新種が見つかったことは、香港周辺の海洋生物の多様性の豊かさを示すものだと考えています。