文章解析からみえてきた「予言者」の性格

自分の評価と売り上げが正反対になってしまう人は、性格や人格に通常とは異なる何らかの要因が存在していると考えられます。
ただ多数にのぼる映画レビュワー1人1人の心理テストをするのは現実的ではありません。
そこで研究者たちは「失敗の前兆者」の特性を持つ映画レビューワーが書いたテキストに対して文章分析を実行し、他のレビュワーと文体や語法、性格特性に何らかの違いがあるかを調べてみました。
すると「失敗の前兆者」は普通のレビュワーに比べて、映画に対して分析的で形式的な書き方をしていたのに加え、「私」のような1人称の代名詞の使用頻度が低いことが判明します。
「分析的、形式的、1人称を使わない」で書かれる文章は個人の感想だという前提が隠されてしまい、絶対者や神の視点で語られがちになります。
そのような文章はしばしばレビューというより映画に対して審判を下す「判決」に近いものになり得ます。
また「失敗の前兆者」の一般大衆に対する態度を文面から分析したところ、大衆の意見を重要視せず、自分のレビュワーとしての能力に過度な自信を示す傾向がありました。
こう書くと、独りよがりかつ外れてばかりのレビューを書く「失敗の前兆者」は、あまり優秀なレビュワーではないように思えてきます。
しかし「失敗の前兆者」としての特性を持つレビュワーは、アマチュアから映画批評家の大家として知られるトップレビュワーまで広く存在していました。
豊富な知識と高い専門性、優れたセンスを持つ一流評論家の中にも「失敗の前兆者」がいるという事実は非常に興味深いと言えるでしょう。
またトップレビュワーかつ「失敗の前兆者」の特性を持つレビュワーの文章を解析したところ、高評価なレビューを書くときには他のレビュワーたちよりも、より多くの「副詞」が含まれているという特徴があることがわかりました。
※副詞は「ゆっくり」「はっきり」「とても」など、名詞以外の言葉や文章を修飾する言葉。
また低評価なレビューを書くときには、より一段と分析的にな文体になっていたことも判明します。
次のページでは、そんな「失敗の前兆者」が映画業界にもたらしてくれる、莫大な利益について解説したいと思います。