ミョウバンの結晶とは?
ミョウバンを溶かした水を冷やしていくと、上の図のような透明の固体が出来上がります。
これはミョウバンの結晶です。
不思議なことに、ミョウバンの結晶を正しい手順で作ると必ず正八面体となり、ほかのかたちにはなりません。
「ミョウバンを水に溶かして冷やす」
この簡単な手順で、誰もが上の図のようなきれいな正八面体の結晶を手に入れることができます。
結晶とは?ミョウバンの結晶が正八面体になる理由
結晶は原子やイオンが規則正しく配列されている固体のことです。
目には見えませんが、さまざまな物質は原子やイオンが結合してできていて、その結合の仕方やかたちは物質によってさまざまです。
原子やイオン単位でどのようなかたちをしているのか確認するためには、倍率100万倍まで見られる電子顕微鏡を使わなければなりません。
しかし、分子構造が規則的な物質は、結晶として育てていくと原子やイオンが結合したときにできるかたちのまま成長していくため、肉眼で物質の配列がどのようなかたちをしているのか確認できるようになります。
つまり、分子構造が立方体である物質の結晶は、同じく立方体のかたちをしている、ということです。
ミョウバンの分子構造は下図のような規則的な正八面体です。
そのため、ミョウバンの結晶も同じく正八面体となります。
ミョウバンとは
ミョウバンとは白い粉上の物質で、硫酸がアルミニウムと鉄と結合することでできる物質です。
硫酸、アルミニウム、鉄からできるものですが、毒性はまったくなく体内に入れても問題ありません(ただし、過剰摂取すると健康被害が懸念されます)。
通常は、熱を加え水を飛ばし、「焼ミョウバン」として漬物の変色や荷崩れを予防するために食品添加物として使われます。
結晶の作り方~なぜミョウバンは結晶を作りやすい?~
物質はそれぞれ水に溶けることができる量が決まっていて、100gの水に溶かすことができる物質の質量を「溶解度」といいます。
物質によって溶解度は異なりますが、通常水の温度が高ければ高いほど溶解度は上がります。
そのため、温度が高い状態で溶解度まで物質を水に溶かし、その後冷やしていくと、水に溶け切らない物質が出てきます。
この、溶け切らない物質は固体として水中に現れるのですが、これが結晶です。
つまり、結晶は温度による溶解度の差を利用して作ることができます。
ミョウバンは温度による溶解度の差が大きいため(温度が高いときに溶解度が高く、温度が低いとき溶解度が低い)、結晶の作成に適しています。
下の表を見てください。
これを見ると、水の温度が80℃のときのミョウバンの溶解度は約260g、20℃のときは約30gです。
そのため、80℃の水で溶解度までミョウバンを溶かししたのちに水溶液を20℃まで冷やせば、230gものミョウバンが溶け切らずに出てきます。
一方、食塩は温度が変わっても溶解度に大きな差がありません。
100℃ちかく熱した水に食塩を溶かして冷やしたとしても、ほんの数gしか溶け切らない状態です。
これでは、結晶として現れる固体もかなり小さいでしょう。
硝酸カリウムも溶解度に差がある物質ですね。
しかし、硝酸カリウムは人体にとって毒であり、口に入れるどころか触ってもいけません。
危険性のある物質の扱いに慣れていない人が扱うのは難しいでしょう。
ミョウバンは食品添加物として使われるもので、素手で触っても問題ありません。
小中学生でも安全に扱えます。
「温度による溶解度に差がある」「人体にとって無害」
この2つの理由により、ミョウバンは結晶作りの教材としてよく採用されています。