夏休みといったら自由研究
夏休みといったら自由研究 / Credit:photoAC
chemistry

意外と奥が深かった自由研究!ミョウバン結晶はなぜ正八面体?

2023.08.05 Saturday

料理に入れて発色を良くしたり、荷崩れを防止したいときなどに使われるミョウバン。

普段あまり使うことはないかもしれませんが、実はミョウバンを水に溶かしたミョウバン水から、透明で美しい宝石にような結晶を作ることができます。

ミョウバンから結晶を作り出すことは、自由研究のテーマとしてもよく使われ「作ったことがある」という人もいるのではないでしょうか。

今回は、なぜミョウバン水から美しい結晶ができるのか結晶作りで使われるのはなぜミョウバンなのか、その原理について解説します。

単結晶成長に関する研究の必要性 http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/engineering/chair/taishi/research_deeply.html
実験で学ぶ化学 https://core.ac.uk/reader/230580760

ミョウバンの結晶とは?

正八面体になっているミョウバンの結晶
正八面体になっているミョウバンの結晶 / Credit:photoAC

ミョウバンを溶かした水を冷やしていくと、上の図のような透明の固体が出来上がります。

これはミョウバンの結晶です。

不思議なことに、ミョウバンの結晶を正しい手順で作ると必ず正八面体となり、ほかのかたちにはなりません

「ミョウバンを水に溶かして冷やす」

この簡単な手順で、誰もが上の図のようなきれいな正八面体の結晶を手に入れることができます。

結晶とは?ミョウバンの結晶が正八面体になる理由

結晶は原子やイオンが規則正しく配列されている固体のことです。

目には見えませんが、さまざまな物質は原子やイオンが結合してできていて、その結合の仕方やかたちは物質によってさまざまです。

原子やイオン単位でどのようなかたちをしているのか確認するためには、倍率100万倍まで見られる電子顕微鏡を使わなければなりません

しかし、分子構造が規則的な物質は、結晶として育てていくと原子やイオンが結合したときにできるかたちのまま成長していくため、肉眼で物質の配列がどのようなかたちをしているのか確認できるようになります。

つまり、分子構造が立方体である物質の結晶は、同じく立方体のかたちをしている、ということです。

ミョウバンの分子構造は下図のような規則的な正八面体です。

ミョウバンの分子構造:中心がアルミニウムイオン、それぞれの頂点はカリウムイオンで構成されている
ミョウバンの分子構造:中心がアルミニウムイオン、それぞれの頂点はカリウムイオンで構成されている / Credit:佐藤真理・渥美みはる

そのため、ミョウバンの結晶も同じく正八面体となります。

ミョウバンとは

ミョウバンは食品添加物として売られています
ミョウバンは食品添加物として売られています / Credit:大洋製薬

ミョウバンとは白い粉上の物質で、硫酸がアルミニウムと鉄と結合することでできる物質です。

硫酸、アルミニウム、鉄からできるものですが、毒性はまったくなく体内に入れても問題ありません(ただし、過剰摂取すると健康被害が懸念されます)。

通常は、熱を加え水を飛ばし、「焼ミョウバン」として漬物の変色や荷崩れを予防するために食品添加物として使われます。

結晶の作り方~なぜミョウバンは結晶を作りやすい?~

物質はそれぞれ水に溶けることができる量が決まっていて、100gの水に溶かすことができる物質の質量を「溶解度」といいます。

物質によって溶解度は異なりますが、通常水の温度が高ければ高いほど溶解度は上がります。

そのため、温度が高い状態で溶解度まで物質を水に溶かし、その後冷やしていくと、水に溶け切らない物質が出てきます。

この、溶け切らない物質は固体として水中に現れるのですが、これが結晶です。

つまり、結晶は温度による溶解度の差を利用して作ることができます。

ミョウバンは温度による溶解度の差が大きいため(温度が高いときに溶解度が高く、温度が低いとき溶解度が低い)、結晶の作成に適しています。

下の表を見てください。

物質ごとの溶解度の違い
物質ごとの溶解度の違い / Credit:浜島書店

これを見ると、水の温度が80℃のときのミョウバンの溶解度は約260g、20℃のときは約30gです。

そのため、80℃の水で溶解度までミョウバンを溶かししたのちに水溶液を20℃まで冷やせば、230gものミョウバンが溶け切らずに出てきます。

一方、食塩は温度が変わっても溶解度に大きな差がありません

100℃ちかく熱した水に食塩を溶かして冷やしたとしても、ほんの数gしか溶け切らない状態です。

これでは、結晶として現れる固体もかなり小さいでしょう。

硝酸カリウムも溶解度に差がある物質ですね。

しかし、硝酸カリウムは人体にとって毒であり、口に入れるどころか触ってもいけません

危険性のある物質の扱いに慣れていない人が扱うのは難しいでしょう。

ミョウバンは食品添加物として使われるもので、素手で触っても問題ありません。

小中学生でも安全に扱えます。

温度による溶解度に差がある」「人体にとって無害

この2つの理由により、ミョウバンは結晶作りの教材としてよく採用されています。

次ページミョウバンの結晶を作ってみよう!

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

化学のニュースchemistry news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!