20年以上前に見つかった古代戦士の謎
1999年、イングランド南西沖に浮かぶシリー諸島の一つ、ブライハー島(island of Bryher)にて、2000年以上前に遡る古代戦士の墓が発見されました。
棺には男性戦士の副葬品である「鉄製の長剣」が入っていたため、埋葬された人物は男性の可能性が高いと考えられました。
ところが同じ棺の中から「銅鏡」が見つかったことで事態は一転します。
鏡は当時の社会で女性との関連性が強く、しばしば女性の副葬品ともなっていました。
同時代の埋葬地では、剣は男性の、鏡は女性の墓から見つかるのが普通であり、両方が1つの棺に入っているのは異例でした。
また副葬品としてはこの他に盾の残骸、金属製のブローチ、螺旋状の指輪など、男性にも女性にも当てはまるものが見つかっています。
さらに頼みの綱である遺骨はバラバラに崩壊が進んでおり、性別を特定するためのDNAが抽出できませんでした。
それゆえ、20年以上もの間、遺骨は性別不明のまま放置されることになったのです。
歯の分析から「女性」と判明!
しかし研究チームは今回、ここ数年で進歩した歯の分析技術を駆使して、性別の特定に成功しました。
研究主任の一人であるグレンドン・パーカー(Glendon Parker)氏は「歯のエナメル質は人体で最も硬く耐久性のある物質であり、X染色体またはY染色体のどちらかと関連するタンパク質を含んでいるため、性別の判定に利用できる」と説明します。
このタンパク質の痕跡を調べた結果、歯の中からX染色体にのみ存在する遺伝子によってコードされるタンパク質が見つかったのです。
一方で、Y染色体に関連するタンパク質は検出されず、この人物はY染色体を持っていないことが示されました。
つまり、古代戦士は性染色体XXのセットを持つ「女性」であると考えられるのです。
チームは「96%の確率で女性と判断できる」と述べています。
では、この女性戦士はどのような人物だったのでしょうか?