高齢鳥は旧友に会えないと馴染みの場所から旅立つ
研究者らは行動観察データから、鳥たちがどれだけ正確に1つの場所に戻ってくるか(「場所への忠実性」)と、どの鳥が戻ってどの鳥は戻らないのかを整理しました。
そして、鳥たちの「場所への忠実性」がさまざまな要素によってどう変化するのかを確認しました。
その結果、観察地であるサンタクルーズ植物園で冬を越す回数が多いキガシラシトドほど、群れから離れることが少ないことが明らかとなりました。
それだけではありません。さらにデータを分析すると、より感傷的な図式が浮かび上がってきました。
前に群れを形成していた仲間に会えない年は、以前に滞在していた場所から遠く離れる傾向があったのです。
この傾向は、特に複数年同じ場所で過ごした鳥の群れに強くみられ、植物園で2年目を過ごす鳥の群れの観察では、生息地を離れる傾向はほぼみられませんでした。
研究者によれば「2年目のキガシラシトドたちは、堅い絆で結ばれるに至っていない可能性がある」そうで、旧友との再会がとくに高齢の鳥にとって大きな意味を持っていたことが推測できます。
キガシラシトドが同じ場所に戻る動機は、その場所の資源だけでなく、そこで再会できるかもしれない鳥仲間にあるのかもしれません。
研究者らによれば、カナダ北部やアラスカに渡ったキガシラシトドが戻ってくる確率は約50%。困難を乗り越えた「旧友」は、協力関係や喧嘩のない穏やかな時間など、特別な利益をもたらす可能性があります。
高齢キガシラシトドにとって仲間との絆は、場所が提供してくれる資源と同じくらい重要なものなのかもしれないと、研究者らは述べています。
「仲間と一緒にいることを好むからつるむのか、他の個体との争いを避けるためにつるむのか、理由はわかりません。
いずれにせよ、キガシラシトドにとって、慣れ親しんだ群れの仲間は大切な存在のようです」