体臭は自分と相手の遺伝的な違いを無意識に感じ取っている!?
体臭は病気のサインとして現れることもあります。
例えば、息が腐った果物のように匂う場合、それは糖尿病の可能性があったり、腸チフスの患者の汗からは、焼きたてのパンのような匂いがすることもあります。
さらに、パーキンソン病の患者の体臭は「木や麝香(じゃこう:雄のジャコウジカの分泌物を乾燥した香料、生薬の一種)のような匂い」と言われています。
ある女性は、夫の体臭が変わったことからパーキンソン病を疑い、後の検査でその直感が正しかったことことが証明されたケースも報告されています。
つまり私たちは嗅覚疲労を起こしますが、これによって普段と違う匂いがしたとき敏感に反応できている可能性があるのです。
今、一部の科学者たちは匂いを使って病気を早期に発見できないか研究を進めています。
近い将来、体臭や口臭から病気がみつかる技術が開発されるかもしれません。
また、匂いは私たちの健康だけでなく、人と人との関係にも影響を与えています。
1995年には、複数の女性が男性のTシャツの匂いを嗅ぐ実験が行なわれ注目を集めました。
その結果、女性たちはそれぞれ異なる匂いを好む傾向がありました。
また、その好みの傾向が、免疫システムが病原体を認識する際に必要な遺伝子群、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と関連していることも分かりました。
そして驚くことに、女性は自分とは異なるMHCを持つ男性の匂いを好む傾向があったのです。
これには、自分とは異なるMHCを持つ人との間に子供をもうけることで、その子供がさまざまな病気に対して強い免疫を持つ可能性が高まることが理由と考えられます。
これは人間の本能とも言える現象なのです。
また私たちはパートナーに対しては遺伝的に異なる人を選ぶ傾向があるようですが、友人を作る場合には匂いを通じて共通点を感じ取っているとも言われています。
同じ環境で生活する人は似た匂いを持っている場合が多く、そうした相手は自分と気が合う可能性が高いため、私たちは自分に似た匂いの人を好む傾向があるのです。
松波氏は、「私たちは嗅覚を使って他人と自分を比較・評価しています。そして、私たちがその人に期待する役割や関係性によって、どのような匂いを好むかが変わってくるのです」と語っています。
人間は視覚中心の生き物とされてきたため、嗅覚は他の感覚と比べてあまり注目されていませんでした。
しかし、新型コロナウイルスの流行により、多くの人が嗅覚を失う症状を経験したことで、嗅覚の大切さやその影響が再確認されています。
「匂い」は私たちの日常生活に密接に関わっており、人とのコミュニケーションや健康状態を知る手がかりとしても重要な役割を果たしています。
私たちが他人の匂いに敏感で、自分の匂いに鈍感なのは、より良い人間関係を築くための自然な仕組みなのかもしれません。