2021年に発見されたばかりの新しい磁気浮遊
多くの人は子供の頃、2つの磁石を上手く合わせて、一方の磁石を浮遊させられないか試したことでしょう。
物体の浮遊は直感に反する現象であり、SF作品に登場する神秘的なオブジェクトはしばしば、浮遊した状態で描かれています。
しかし多くの試みにもかかわらず、2個の磁石での浮遊に成功させた人はいないでしょう。
磁石には自らの重さ以上の物体を引き上げる力がありますが、空中に持続的に浮かび続ける「安定した浮遊」を実現するには、力のバランスを制御する別の技術が必要となるからです。
しかし2021年になって、同じような大きさの2つの永久磁石を使用する、新しいタイプの磁気浮上が発見されました。
この新たな磁気浮上では上の図のようにローターと呼ばれる水平方向にN極とS極が倒された磁石が毎分1万回転もの速度で回転されます。
この回転しているローター磁石を、垂直方向にN極とS極が配置されたフローターと名付けられたもう一方の磁石に近づけると、フローターがローターに向けて浮上するのです。
また興味深いことに、このフローターの浮上は単に重力と逆方向の力が働くのではなく、ローターから「一定の位置に固定」されます。
浮上しているローターを上方向に摘み上げようとする場合にも、重力に加えて固定を打ち破る追加の力が必要とされるのです。
そのため上の動画のように仕組み全体を横に倒しても、ローターを浮遊させ続けることが可能となっています。
磁気で物体がフワフワと浮上する現象は、おもちゃとして古くから知られている、回転しながら浮上するコマ「レビトロン」にもみられます。
しかしレビトロンのコマは浮いていますが、ドリルの動画のように角度を変えても追従して浮き続けるような力はありませんでした。
このレビトロンでは、磁石の回転速度は人間の指の力でも達成できる程度(500RPM)であり、安定して浮かんでいるのもコマの回転する力に頼っています。
そのためレビトロンを横倒しにすると、上のコマは下に落ちて行ってしまいます。
一方、2021年に発見された磁気浮遊は遥かに高速の回転(1万RPM)を行った場合に、動画のように角度の変化にも追従し磁石同士の距離を維持し続けたのです。
レビトロンが磁力の力とコマの安定性だけに依存して浮かんでいる一方で、新型の磁気浮遊は浮かばせるというよりも、特定の位置に相手を固定するものと言えるでしょう。
(※実験装置の写真にあるN極とS極の位置関係も、レビトロンとは全く違うものになっています)
そのため新発見された磁気浮上は、既存の磁気浮上とは異なる、未知の仕組みによって達成されていると考えられています。
そこで今回、デンマーク工科大学の研究者たちは、発見から間もない新たな磁気浮上の仕組みを解明すべく、調査に乗り出しました。
なぜ高速回転する磁石は、横向きにしても磁石を空中に固定できるのでしょうか?