隕石衝突により何が起こっていたのか?
チームは得られた粒子のデータを地球大気のコンピューターモデルに入力し、シミュレーションを実施。
その結果、隕石衝突後の1週間以内に直径0.8〜8マイクロメートルの微小な「ケイ酸塩」の粉塵が全球規模で移動し、地球の上空を覆っていたことが示されました。
このサイズは一般的なヒトの毛髪の直径(50マイクロメートル)よりも小さいものです。(1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル)
これらケイ酸塩の粉塵は、隕石が地上の岩石を粉砕した衝撃で発生したものと考えられています。
さらに、隕石の衝突熱により岩石が蒸発し、硫黄を含んだガスが生成され、大気の上層で冷えて小さな粒子になったことも分かりました。
加えて、大規模な山火事も発生し、大量のススや灰も上空に放出したことが特定されています。
それだけでなく、隕石の衝突は、地球上のすべての大陸に対し高さ1.5キロもの巨大津波を引き起こしました。
また2004年に起きたスマトラ島沖地震のおよそ5万倍も強力な地震活動も発生させたと推定されました。
隕石の衝突でさまざまな惨劇が地球を襲ったわけですが、しかしこの中で生命にとって最も致命的となっていたのは「ケイ酸塩」の粉塵でした。
最も致命的だったのは「ケイ酸塩」の粉塵
チームの分析によると、非常に微小で軽い「ケイ酸塩」の粉塵はまたたく間に全球規模で広がり、上空を覆いました。
この出来事は地球全体を暗闇で覆い、太陽光を遮って、約2週間以内に植物の光合成を停止させたと推測されます。
そしてこの完全な暗闇は隕石の衝突から1.7年(620日)にわたって続き、一部の植物が光合成を再開できるまでには少なくとも4年を要したとのことです。
研究者いわく「これは陸上と海洋の両方の生息地に深刻な問題をもたらすのに十分な時間スケールである」といいます。
光合成がストップし植物が死滅し始めたことで、食物連鎖のネットワークが崩壊し、植物を食べていた草食動物、そして草食動物を食べていた肉食動物たちは次々に死んでいったでしょう。
加えて、他の硫黄や煤煙の粒子が比較的早く地上へ落下し始めるのに対し、ケイ酸塩は最長15年間も大気中に浮遊しつづけ、その間に地球の平均気温を15°Cも低下させたと推定されました。
研究主任のセム・ベルク・セネル(Cem Berk Senel)氏は「これまで考えられてた以上に、微小な粉塵が気候変動や生態系の崩壊に及ぼした影響は大きかったことが確認された」と述べています。
こうして長く続いた恐竜時代が終わるとともに、多くの動植物も姿を消すことになりました。
しかし、それでも生命は生き残る道を見つけていました。
地球規模の惨事を耐え抜いた鳥類や哺乳類、昆虫、魚類たちが、新しい世界を築き上げていったのです。
彼らの頑張りがなければ、今日の私たちも存在してはいなかったでしょう。