哺乳類の寿命が短いのは恐竜の圧力を受けていたから!? 新説が提唱される
哺乳類の寿命は、身体の大きさ(体重)に比例すると言われています。
例えば、ネズミの寿命は約2年であり、イヌの寿命は約12年です。
これがゾウのような巨大な種になると平均寿命は約60年となり、シロナガスクジラのような巨大な種の平均寿命は約90年です。
そのため、身体が小さな哺乳類は非常に早く成長し、生殖が可能になります。
そして、あっという間に老化し、寿命を迎えるのです。
現代の人間には医療という味方がいるため、例外的に体重と比較して長寿といえますが、基本的には哺乳類全体の身体サイズと寿命のルールに従っています。
なにより、生物の目的は繁殖であり、その期間が生物の寿命を理解する上で特に重要となります。
例外的に長寿になる個体がいたとしても、繁殖可能期間を過ぎると急速に老化が進み始め生物としては衰えていきます。
人間も長寿の傾向があるとはいえ、繁殖におけるピークは10代後半から20代の辺りであり、自然の中ではこれ以上長く生きることは想定されていないということになります。
一方、爬虫類や両生類の中には、サイズが小さくとも長生きする動物が存在します。
例えば、ガラパゴスゾウガメの平均寿命は100年を超え、オオサンショウウオの平均寿命は80年だと言われています。
そして特に異なるのがその老化プロセスです。デ・マガリャエス氏は、「すべての哺乳類は顕著な老化プロセスを示すが、一部の爬虫類や両生類は老化が非常に遅い」と述べています。
では、どうして哺乳類と爬虫類・両生類には、このような老化プロセスの差が生じるのでしょうか?
最近、デ・マガリャエス氏は、「長寿のボトルネック仮説(The longevity bottleneck hypothesis)」という新説を提唱しました。
その仮説によると、「恐竜の存在が哺乳類の寿命を短くした」というのです。
上の図が示すように、進化論では、「哺乳類」と「爬虫類・両生類」は異なった経路で進化したと考えられています。
そして2億年前~6600万年前の間、両者は「捕食される側」と「捕食する側」の関係にあったという。
加えて新説では、「当時の哺乳類は恐竜に絶えず襲われており、その中で子孫を残していくには、捕食される前に素早く成長し、繁殖しなければいけなかった」と説明しています。
デ・マガリャエス氏は、「初期の哺乳類は1億年以上にわたって、急速に繁殖するよう圧力にさらされ、これが哺乳類の長寿に関連する遺伝子の喪失、または不活性化を引き起こした可能性がある」と主張しています。
つまり、現在の哺乳類が、身体サイズと寿命のルールを超えて長寿にならないのは、はるか昔の恐竜の圧力のなごりだというのです。
一方、その圧力にさらされなかった現在の爬虫類・両生類には、そのルールに縛られない長寿の存在が見られるというわけです。
この新説は老化を説明する仮説の1つに過ぎず、正しいと証明されたわけではありません。
とはいえ、恐竜の恐るべき影響が今も哺乳類の寿命に刻まれているというのは興味深い仮説であり、またその恐竜が滅んでその後哺乳類が繁栄したというのも皮肉めいて面白い話でしょう。
まるで強権を誇った王国が滅び、虐げられていた民が繁栄した物語のようですね。しかし、そこには短命という形で虐げられた時代の刻印が残っているのです。