人はロボットとの抱擁中に「頭を撫でられる」ことで、ロボットに愛着がわく
抱きしめる、抱きしめられるといった他者との触れ合いは、信頼や愛情を育み、幸福感を味わうのに大切な行為です。
ただし、誰もがその恩恵を受けられるわけではありません。
「身近に抱きしめてくれる人がいない」「家族や恋人と遠く離れている」「愛する人と死別した」「そもそも文化的にハグすることがめったにない」など、様々なケースが考えられます。
それでも「抱きしめられたい」と感じることはあるものです。
そんな私たちの気持ちを満たしてくれるのが、大西氏らが開発したテディベア型ロボット「Moffuly-II」です。
Moffuly-IIは、身長200cm、腕の長さ110cmであり、大人でもしっかりと抱きしめることができます。
テディベアという可愛らしい見た目も相まって、大人でも「触ってみたい」「抱きついてみたい」「抱きしめられたい」と感じる人は多いでしょう。
これまでにも人を抱擁するロボットの研究は行われており、相手がロボットであっても、触れ合うことにはストレス緩衝などのメリットがあると報告されています。
しかし単に「抱きしめる」といっても、その行為には「優しく撫でる」や「ぎゅっとする」など、動作に違いがあります。
そこで大西氏ら研究チームは、ロボットの抱擁の仕方の違いを人々がどのように感じるか調査しました。
実験には、30名(男性15名、女性15名)が参加し、以下の4パターンでMoffuly-IIの抱擁を受けた後に、ロボットの印象を評価しました。
- 背中をぎゅっとする
- 頭をぎゅっとする
- 背中を撫でる
- 頭を撫でる
その結果、グラフの通り、ぎゅっとするよりも撫でる動作の方が好ましく感じられると分かりました。
撫でる部位としては、背中よりも頭の方が効果的でした。
人は、ロボットと抱擁して頭を優しく撫でられると、そのロボットに愛着がわき、自身を助けてくれる存在だと感じるというのです。
ちなみに過去の研究では、「撫でるよりもぎゅっとする方が効果的」という逆の結果が出ていました。
研究チームは、過去の研究の撫でる動作が、「撫で上げる動作と撫で下げる動作の組み合わせ」だったのに対し、今回のMoffuly-IIの撫でる動作は「撫で下げる動作のみ」だったことが原因ではないかと推測しています。
私たちは誰しも、相手が欲しいと感じる瞬間があります。
もしかしたら、これからの時代は、その寂しさをロボットが埋めてくれるかもしれません。
もちろん最初は、ロボットとハグすることに抵抗を感じる人も多いでしょう。
それでも今回の研究が示唆するように、私たちはロボットに優しく頭を撫でられているだけでも、自然と相手に愛着を感じ安心感を得られる可能性があります。
理想的な人間への触れ方や撫で方の研究が進めば、将来あなたは、ロボットのハグなしでは満足できなくなるかもしれません。