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ロボットが医師の手を借りずにリアルな人型モデルで胆嚢摘出を成功させる / Credit:Canva
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自律型のロボット外科医が人間の手を借りずに臓器摘出手術を成功させる

2025.07.11 20:00:44 Friday

手術ロボットと聞くと、多くの人は「人間の外科医が操作するロボットアーム」を思い浮かべます。

たとえば、外科医がモニター越しに遠隔で操作する補助的な機械というイメージが一般的でしょう。

しかし、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学(JHU)の研究チームは、こうした常識を根底から覆す「完全自律型手術ロボット」の開発に成功しました。

その名は「SRT-H(Surgical Robot Transformer-Hierarchy)」。

研究チームは、このロボットが手術チームの音声指示だけで、自ら判断して臓器摘出手術を完了させたことを発表したのです。

この成果は、2025年7月9日付で『Science Robotics』誌に掲載されました。

※記事の後半では、実際の手術画像があります。苦手な方はご注意ください。

Autonomous robot surgeon removes organs with 100% success rate https://newatlas.com/robotics/worlds-first-robot-surgery/ Robot performs first realistic surgery without human help https://hub.jhu.edu/2025/07/09/robot-performs-first-realistic-surgery-without-human-help/
SRT-H: A hierarchical framework for autonomous surgery via language-conditioned imitation learning https://doi.org/10.1126/scirobotics.adt5254

人間の医師の手を借りない「手術ロボット」の開発

現在の医療現場で使われている手術ロボットは、あくまで「拡張された医師の手」にすぎません。

高精度な動作やミニマルな切開が可能ではあるものの、機械単体では判断も計画もできないのが実情です。

つまり、すべての動作は人間の外科医によって逐一操作され、機械自身は「指示待ち」の存在でした。

ところが、ジョンズ・ホプキンズ大学のチームが開発したSRT-Hは、自律的に手術を遂行するロボットです。

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完全自律型の手術ロボットを開発 / Credit:Canva

医師の操作を受けることなく、手術中に遭遇する予期せぬ状況にも自ら対応・修正しながら手術を完了する能力を備えています。

このSRT-HはChatGPTのような言語モデルで手術内容を理解しながら、映像ベースの模倣学習によって動作制御もこなせます。

このシステムは、従来の「シナリオ通りにしか動けない手術ロボット」とは一線を画します。

柔軟に状況を把握し、手術の流れを逐次的かつ動的に構成し直すことが可能なのです。

また、トレーニングには実際の手術映像を使った「模倣学習(Imitation Learning)」を活用し、人間の熟練医師の動作や判断をそのまま取り込んでいます。

そして今回、SRT-Hの実力を示すための実験対象となったのは、リアルな人型モデル(人間ではありません)です。

この臓器モデルを用いて、研究チームは胆嚢摘出手術(cholecystectomy)におけるロボットの自律能力を検証しました。

手術には全部で17の工程が含まれており、各ステップでは胆管や動脈の識別、クリップの正確な配置、ハサミによる切除など、高度な操作が求められます。

※次項には実際の手術画像があります。苦手な方はご注意ください。

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