多細胞生物は既存の説よりも遥かに古い起源を持つ
新たに発見された化石は上の図のように、複数の円筒状または樽状の細胞が連なった形状をしており、最大で860μmと1㎜に迫るサイズとなっています。
また植物のように細胞間には薄暗い細胞壁のような構造が存在しており、さらにいくつかの細胞内には、直径15~20μmほどの胞子と思われる球状の構造が確認できました。
多細胞生物は細胞が接続されているだけでなく、体を担当する細胞と生殖を担当する細胞が別に存在するという特徴がありますが、この化石にはそのどちらの要素もみられます。
(※原核生物であっても多細胞からなる単純なフィラメントを作りますが、一般には非常に小さくサイズは1~3μmしかなく、胞子のような生殖を専門に担当する細胞は存在しません)
さらに研究者たちは、化学的な手法(ラマン分光調査)を用いて炭素質物質の分析を行い、同じ地層から発見されたシアノバクテリア(原核生物)と「Qingshania magnifica」の違いを確かめました。
すると「Qingshania magnifica」はシアノバクテリアとは異なる炭素質を含んでおり、より真核生物に近い特性を持っていることが示されました。
このことは、発見された化石は周囲にいた原核生物が偶然に縦列したのではないことを示しています。
このことから研究者たちは、発見された化石は緑藻類に似た多細胞生物であり、多細胞生物の誕生は既存の説(10億年前)よりも6億年以上古い、16億3500万年前の可能性があると結論しています。
そうなると、真核生物の誕生と多細胞真核生物の誕生のタイムラインも大きく変更されます。
先に述べたように、最も古い明確な真核生物の化石は16億5000万年前の地層から発見されています。
つまり真核生物の誕生直後に多細胞化が起こっていた可能性があるのです。
(※過去に行われた複数の研究でも、酵母菌が短期間で多細胞体に進化することも示されています)
もし今回の研究結果が正しければ、教科書レベルの知識が書き直されることになるでしょう。
次ページでは今回の研究に関する興味深い裏話を紹介します。