テディベアの癒し効果はどこから来るのか?外見?それとも手触り?
代表的なぬいぐるみといえば、クマのぬいぐるみである「テディベア」です。
寝ているものや座っているものなど様々なポーズのテディベアが存在します。
色や表情だけでなく、素材も様々であり、化学繊維を使ったものや、アルパカの毛など、天然素材を用いたものまであるようです。
また手の中に納まる小さなテディベアもあれば、人間と同じくらい大きなテディベアもあります。
当然、テディベアの種類によって見た目の印象や手触り、抱き心地が大きく変わってきます。
では、多くの人たちが認める「テディベアの癒し効果」は、どこから来ているのでしょうか。
色や形なのでしょうか。それとも外見にとらわれない別の要素でしょうか。
トリボット氏ら研究チームは、「テディベアの癒し効果は、過去の多くの研究が報告されていますが、その根底にある決定要因は分からないままだ」と述べています。
そのためチームは、この疑問の答えを明らかにするため、395人の参加者を集め、実験を行いました。
参加者は主に子供と若者(年齢中央値12歳、平均年齢18歳)であり、60%が女性でした。
そして彼らに様々な特徴を持つテディベアのコレクションと触れ合ってもらい、見た目や手触りなど、テディベアの魅力、癒し効果を評価してもらいました。
しかし今回の研究で特徴的なのは、調べる対象のテディベアの所有者に関する要素を比較した点です。今回の研究で用いたテディベアには、自分のもの、他人のもの(他の参加者が所有するもの)、研究チームが用意したものが用いられたのです。
この要因も考慮した上で、各参加者にそれぞれのテディベアを比較してもらい、困った時にどちらを抱きしめたいか判断してもらいました。
すると、他人が所有するテディベアの癒し効果を評価する場合は、最も重要な要素が、柔らかさ、毛の長さ、匂い、体のボリュームだと判明しました。
また他人が所有するテディベアにおいて、テディベアが笑顔であることは、そうでないぬいぐるみより、わずかに癒し効果に影響しました。
しかし、これら外見や手触りが評価に影響するのは、「自分のものではないテディベアだけ」で、参加者が「自分のテディベア」を評価する時には、癒し効果の評価と関連がなかったのです。
しかも、他人のテディベアや実験で提供されたテディベアよりも、自分のテディベアの方がはるかに癒し効果が高いと評価されました。
参加者たちは、テディベアの持つさまざまなパラメータよりも、自分が所有するテディベアであるという点に、もっとも癒やしの効果を感じていたのです。
子供は自分のぬいぐるみを失くした際、代わりにそっくりなぬいぐるみを与えられてもあまり喜びません。
なのでこれは当たり前といえば、当たり前な結果かもしれません。
しかし、きちんと調査することで、ぬいぐるみが持つ癒し効果の根底にあるものが「自分自身のものだ、という感情的な絆」に起因することが今回はっきりと示唆されました。
今回の研究は、テディベアに限定した調査でしたが、この結果はぬいぐるみ全体や人形などにも共通する可能性があります。
また実験対象が平均年齢18歳であったことから、この作用は子供だけでなく大人にも当てはまると考えられます。
「自分だけのテディベア」として、一緒に時を過ごし、愛情を注いできたからこそ、抱きしめるときに癒されるのです。
それは家族などへ向ける思いと近いものがあるのかもしれません。
最初は手触りや抱き心地で選んだぬいぐるみも、いずれはヨレヨレになってしまいます。それでも共に過ごした「あなただけのぬいぐるみ」が、一番あなたに癒しを与えてくれるようです。