ハーフ顔は人種の垣根を越えて魅力的に見える
この研究の背景には、国際化にともなう異人種交流への関心の高まりが動機としてあります。
人類には長い間、人種差別を続けてきた歴史があり、今でも一部で根深い差別が見られますが、それでも異人種間の婚姻件数は世界的に増加の傾向にあります。
その夫婦間で生まれた子供は当然ながら、2つの異なる人種が入り混じった「ハーフ」となります。
その中で、研究者らは「ハーフの人々が社会的に偏見の目で見られているのか、それとも肯定的に見られているのか」を知りたいと考えました。
そこで今回の研究では、アメリカ中西部の公立大学から募った白人の大学生227名と、北京および上海の大学から募った中国人の大学生116名を対象に、ハーフ顔が単一人種の顔に比べてどのように認識されるかを調査。
実験では、100%白人の顔と100%アジア人の顔を用意し、それらをグラフィカルモーフィングソフトウェアを使って、30%・40%・50%・60%・70%の割合でブレンドした計196枚の顔画像を生成しました。
例えば下の画像は、実際実験で使用された白人とアジア人を50%の割合でブレンドしたものです。
こうした画像を使い、実験参加者の大学生に2つの異なるタスクに取り組んでもらいました。
1つはランダムに提示された顔画像のペアについて、白色系アメリカ人か中国人かというように「人種のアイデンティティ」を振り分けてもらうタスク。
もう1つはランダムに提示された顔画像について、「知性・信頼性・魅力度・健康さ・仕事面での成功可能性」といった社会面での評価をするタスクです。
1つ目のタスクの結果、参加者は自分たちの人種に寄せて顔画像を認識する傾向が強いことが判明しました。
例えば、白人の大学生なら、さまざまな割合でブレンドされたハーフ顔を白色系のアメリカ人と認識しやすく、反対に中国人の大学生はハーフ顔をアジア系の人種だと認識しやすくなっていました。
そして2つ目のタスクでは、白人と中国人の大学生はどちらも一貫して、単一人種の顔画像よりもハーフ顔を魅力的に感じ、知性や信頼度といった社会面で高く評価する傾向が示されました。
ここで興味深い点は、観察者の人種に近い顔ではなく、人種間で中立的な顔がもっとも高く評価されたという部分です。
つまり、白色系のアメリカ人だからといって100%白人の顔を、中国人だからといって100%アジア人の顔を高く評価するわけではなく、ともに両人種が混じったハーフの顔が最も魅力的だと評価されたのです。
日本ではよく、ハーフの人を美形と認識する傾向がありますが、これは日本固有のことではなく、人種の垣根を越えて、ハーフ顔は広く魅力的に認識されやすいことを示唆しています。
では、なぜハーフ顔は魅力的と認識されるのでしょうか?