「ドリトル先生」が訴える動物の言葉に耳を傾ける大切さ
「動物とおしゃべりしたい!」このような願いを誰しも一度は抱いたことがあるでしょう。
そのような願いとは裏腹に、一部の学者たちは「動物は人間のように“言葉”を使った洗練されたコミュニケーション手段をもたない。そのため、動物のコミュニケーションはひどく粗末なものである」と考えてきました。
このような動物に対する態度はなにをもたらすのでしょうか?
そのことを教えてくれるのが、動物と話せるお医者さんの活躍を描いた『ドリトル先生シリーズ』の生みの親である英国の作家、ヒュー・ロフティングの体験です。
ロフティングは第一次世界大戦中にて、「ケガをした兵士は手当てを受けているのに、ケガをしたウマは銃ですぐに撃ち殺されてしまう」状況を目の当たりにし、この人と動物のあつかいの違いにひどく心を痛めました。
おそらく、ロフティングは「動物にも言いたいことがたくさんある。もしも、動物の言葉がわかったならば…」と強く思ったに違いありません。
その後、ロフティングはドリトル先生のお話を通じて、先入観にとらわれず、動物たちの知性や人生にもっと目を向ける必要があることを世間に訴えました。
「動物の言葉がわかったならば…」という思いは時代を超え、現在は動物のコミュニケーションに関する研究が世界中で行われています。
カリブ海では、大型のクジラのコミュニケーション・システムの解明を目指す“プロジェクトCETI(Project CETI)”という大規模な研究が展開されています。
このプロジェクト名の“CETI”という言葉は、地球外知的生命体探索プロジェクトである“SETI (Search for Extra Terestrial Intelligence)”が元ネタで、これをオマージュして英語でイルカ・クジラを指す言葉“セタシアン Cetacian”を加えて命名されています。
研究チームは、マッコウクジラというメスは最大13m、オスは最大18mにもなる大型のクジラのコミュニケーション・システムの解明に挑戦しています。
マッコウクジラは“クリックス”と呼ばれる「カチッ、カチッ」という非常に短い音を使って仲間とコミュニケーションをとります (下のYoutube映像からクリックスを聴くことができます)。
このクリックスの間隔には決まったパターンがあり、あるパターンで発せられるクリックスをまとめて“コーダ”と呼びます。例えば「カチッ、カチッ、カチッ」というパターンもあれば、「カチッ、カチッ、カチッ……カチッ」のようなパターンもあり、このそれぞれがコーダにあたります。
今回、研究チームは2005年から2018年にかけて収集されたマッコウクジラの音声データを解析しました。