
・電気魚の脳のある領域を刺激すると、自分と周囲の判別がつかなくなる
・動物には自らの感覚情報を無効にし、外界から入る情報に集中できるようにするシステムが存在する
・実験では、そのシステムを妨害することで自分とその他の区別が難しくなることを発見した
コロンビア大学の研究によると、脳が自己と他者を区別するために、自らの感覚情報を無効にする機能が非常に重要であることを発見しました。この感覚情報の無効は、他人からくすぐられると笑ってしまう一方、自分で自分をくすぐっても特に感じないという状態に似ています。
研究結果は、感覚情報の無効化機能を失ってしまうと、自分とそれ以外の境界線が曖昧になることを示しています。この発見は、耳鳴りや精神疾患などの病気を理解するための手がかりとなります。
これまで、「自らの感覚情報と外界の情報が混合しないように、情報を判別して行動するメカニズムの解明」は、研究者が注目する課題でした。以前行われた研究では、電気魚やマウスが予測可能な自らの感覚情報を全く無意味な情報に変換するという脳の機能を発見しています。

今回の研究では、変換された無意味な情報が、動物の知覚機能にどれほど影響を与えているか実験を行いました。実験に用いられたのは、エレファントノーズフィッシュ。周囲の状況を把握するセンサーや、コミュニケーションの手段として電流を放出する魚です。
最初の実験では、無意味な情報を生成する特定の神経細胞の活動を記録しました。その結果、記録した神経細胞は、無意味な情報を生成した後の活動として、外部情報に反応するだけで他の活動をしないことが分かりました。
その次に行われた実験では、同様の魚を用いて、「自らの情報を無意味なものにする脳内システム」を妨害すると同時に、動きを観察して感覚能力について調査を行いました。するとその実験中、魚は自分自身と周囲を区別することができないような動きを見せました。これは、脳の特定の分野が、自分とそれ以外のものを区別する働きをもっていることを示しています。
研究者らは、人の場合でも自己と他者を区別する特定の脳領域を有していると推測していますが、現状では直接的にその考えを立証するのは困難です。今回の実験で用いられたような電気魚は、その推測に当てはまる理想的なシステムを持ち合わせていましたようです。
研究チームは、人の場合で自己と他者の区別を行うモデルを作ろうと研究を進めています。この研究が発展すれば、自分と他者の境界線や自己について、脳科学の見地から説明することが可能になるでしょう。
via: Phys.org / translated & text by ヨッシー
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