連絡を絶つ側は心を痛めていることが多い
チームは仮説の真偽を明らかにするため、一連の心理実験を行いました。
1つ目の実験では、参加者にゴースティングの経験について思い出してもらい、ゴースティングをしたとき/されたときにどのような感情を抱いていたかを調査。
参加者はゴースティングの経験があると答えたシンガポールの社会人201名を対象としています。
するとゴースティングの理由としては、忙しくて連絡ができなくなったなどの仕方のない理由から、趣味などをきっかけに仲良くなったが思ったより話が合わなかったからなどの否定的な理由がみられました。
しかしいずれの理由の場合でも、ゴースティングをした側はゴースティングされた側が思っている以上に、勝手との連絡を断つことに対して申し訳なく思っており、相手の心理面を思いやっていることがわかりました。
しかしゴースティングされた側はそんな事情は知らないので、ほとんど常に相手のゴースティングを「思いやりのない行動だ」と評価していました。
2つ目の実験では、先のアンケート結果を参考に、ゴースティングをせざるを得ない状況の仮想シナリオを作成し、そのシナリオに基づいて相手とのチャット中に連絡を中止するちう行動をとってもらいました。
参加者はイギリス在住の118名が対象で、ランダムに2人組のペアに分けられて、互いにチャット上で会話をしてもらっています。
この実験では、ペアを2つの役割に分類していて、「ゴースティングをする側」に割り当てられた側は、会話の途中で、相手に何も言わずに音信不通になってもらっています。
その理由は仮想シナリオに基づいており、忙しくて連絡を取ることができなくなった、話しが合わなくて会話を続けるのが苦痛になったなどです。
するとゴースティングされた側は、状況がわからないまま長い時間返信を待たされる状態になるため、「社会的に望ましくない不適切な行動をされた」と感じていました。
しかし、ゴースティングした側は常に突然連絡を断ったことに対して、相手のことを気にかけて心配していたのです。
3つ目の実験では、人々がゴースティングを避けるためなら、どれくらいのコストをかけるかを調査。
参加者はイギリス在住の118名を対象に、先と同様の仮想シナリオに基づいたオンラインチャットをしてもらいます。
ただこの実験では、ゴースティングする側に割り振られた人が「何の説明もなしに音信不通になるか」「少額のお金を払い、相手に連絡を中止する旨のメッセージを送るか」を選ぶことができます。
すると興味深いことに、参加者の多くはお金を払ってでも相手に連絡中止のメッセージをする方を選んでいたのです。
パク氏は「この結果には本当に驚きました」と話します。
「人々がゴースティングを避けるために自分のお金を積極的に放棄していたのを見て、ゴースティングがいかに悪意のある動機から発するものではないかが強調されました」
以上の結果から、ゴースティングをする人々の多くは悪意のある動機を持っていないこと、ゴースティングをすることに対して実は相手を気づかっていることが示されました。
しかしその反面、ゴースティングを受けた人々は、そんな心理的動機を知らないので、常に音信不通になったことに対して常にネガティブな感情を抱いていました。
まとめると、唐突な音信不通には何らかの理由があり、連絡を断つ側は「相手を思いやる気持ちがある」のですが、その気持ちが相手には伝わっていないので、結局は嫌な行為として受け取られているという現状がみられたのです。
このことからパク氏らは、今回の知見を広めることは、ゴースティングを受けたときの心理的痛みを緩和するのに役立つはずだと指摘しています。
実際、知人から急に音信不通にされると「嫌われたのかな」とか「なんだよ、失礼なヤツだな」と思ってしまうのが常でしょう。
しかし連絡を絶った側には決して悪意はなく、連作先を消したり、音信不通になる前に何か余計なひとことを添えるよりも、「沈黙」がベストな選択肢と思った可能性が大いにあります。
なので、音信不通にされた側はもっと気楽に受け止めてもいいのかもしれません。