お気に入りの曲の歌詞から愛着スタイルを推測できるのか

カナダのトロント大学のラヴィン氏らの研究チームは、お気に入りの曲の歌詞と愛着スタイル・性格の関係性を検討しています。
研究チームは、オンラインで募集した一般人502名を対象に、人間関係をテーマにした、お気に入りの曲、愛着スタイルと性格を尋ねる質問紙に回答してもらいました。
愛着スタイルは、以下の4つの種類があり、最も近い人との人間関係の維持の仕方を調べています。
回避型:感情を表さず、警戒心が強く、親密さを避ける
不安型:相手からの拒絶を心配し、関係性において安心感を常に求める
混合型:回避型と不安型の特徴を持ち、接近と拒絶を繰り返す
安定型:人間関係に楽観的な見通しを持ち、相手を信頼できている
さて好みの曲と愛着スタイル・性格にはどのような関係があったのでしょうか。
現代社会では「回避型」の感情を表す歌詞が増えている

調査の結果、「回避型」の愛着スタイルを持つ人が、もっとも自身の感情と関連性の高い歌詞を好む傾向が見つかりました。
研究者たちは、「不安型」の人ほど自分の感情と曲の歌詞との関連性を重要視すると考えていたため、これは意外な結果だったと述べています。
そのため研究では特に「回避型」の特性について着目しています。ここで改めて「回避型」とはどんな人達か確認してみましょう。
「回避型」とは、主に人間関係に対して悲観的な考えを持つ人であり、具体的には、関係が続かない、パートナーが自分を裏切る、愛されていないなどの悲観的な予測を持つことで、人間関係で傷つくことを恐れ親密になることを避ける傾向を指します。
こうした関連は個人レベルの話ではなく、社会レベルでも結びついている可能性があります。
つまり世間で流行する曲がどんな傾向の歌詞を歌っているか調べることで、社会がどのような方向に向かっているか予測できる可能性があるのです。
そこで研究チームは、1946年から2015年までのビルボードに載った828曲の歌詞を分析しました。
すると、最近の曲になるほど、歌詞の表現が「回避型」の感情を反映している傾向がより多く確認されたのです。
この結果は、現代社会では、多くの人々が独立性に重きを置き、孤立感が強まっている可能性を示唆しています。
確かに最近の世の中で流行る話題のテーマは、一人で楽しめるものにスポットが当てられ、独立心を煽る話題や、結婚や恋愛などは避けて生きる人達の話題が多いように感じます。
これは実際に曲の歌詞の傾向からも読み取れる事実のようです。