聞こえるのに聞き取れない隠れ難聴の原因は「音の解像度」低下にあった
あまり知られていませんが、正常な聴力閾値を持つ成人の10~20%が難聴を抱えていることが、これまでの研究によって判明しました。
「正常な聴力閾値を持つ」とは、普通の人が持つ小さな音を聞き取る能力と同じということを意味します。
正常なのに難聴というと矛盾に聞こえますが、それこそが「隠れ難聴」と言われる所以です。
たとえば人間の隠れ難聴をもつ人々に、マウスに行ったのと同じ「雑音を一瞬途絶えさせるテスト」を行った場合、隠れ難聴の人は音の途切れを認識するのに、より多くの間隔を必要とすると報告されています。
このことから、隠れ難聴は音の解像度の低下が原因であり、また解像度の低下は内耳のシナプスが騒音や老化のせいで失われてしまったためだと考えられていました。
映像でも解像度が低ければ何が映っているか分からなくなるように、音の解像度が低下すれば、たとえ音が聞こえても認識が難しくなります。
ですがこれまでは、隠れ難聴の仕組みを証明するための証拠が不足していました。
しかしヨーク大学の研究者たちの成果により、隠れ難聴の原因が内耳のシナプス数の減少にともなう「音の解像度」の低下であることが示されました。
また健康な個体にシナプス数を増加させるニューロトロフィン3を増加させる措置をとると、普通のマウスよりも「音の解像度」がさらに上昇し、超常的な聴覚を持つマウスの誕生に繋がりました。
研究者たちは音の解像度の低下を防ぐ薬を開発することができれば、多くの隠れ難聴の人々の聴力を普通に近づけられるだろうと述べています。
もしかしたら未来の音楽コンクールは音の解像度を上げる薬がドーピング問題を引き起こしているかもしれませんね。