「眼球」みたいなスーパーアース
2023年12月にJWSTによって得られたデータを分析すると、LHS 1140bは、地球の約1.7倍の大きさで、質量も約6.6倍だと分かりました。
また、ガス惑星の特徴である「水素を豊富に含んだ大気」の証拠は得られませんでした。
むしろ、地球と同じく岩石などで構成されるスーパーアースである可能性が高かったのです。
さらにサイズに対する質量がそこまで大きくないことから、惑星質量の10~20%が水で構成されている可能性があることも分かりました。
さらにLHS 1140bの大気には、窒素が豊富に含まれている可能性も示唆されており、この点でも地球(窒素が78%を占める)に似ている可能性があります。
豊富な窒素は、地球のように気候を安定させる効果があるため、生命が生存するのに適した環境である期待が高くなります。
ただしLHS 1140bは、恒星からの距離やスペクトル分析から、基本的に表面が氷に覆われている可能性が高く、液体の水があるとしたら表面を覆う氷の層の下だろうと考えられていました。
ところが今回の研究では、LHS 1140bは「巨大な眼球」のような姿をしており、この目玉部分は温暖で氷が溶けて液体の海が広がっている可能性が強く示唆されたのです。
そのような不思議な状態になる理由は、LHS 1140bの自転が「潮汐ロック」を起こしているためです。
潮汐ロックとは、ある天体の自転と公転の周期が同期することで、公転する側の天体が常に主星に対して同じ面を向け続ける状態を指します。
最も身近なケースとしては、地球と月の関係が挙げられます。潮汐ロックにより、月は常に地球に対して同じ面しか見せていないため、裏側を見ることができません。
この現象を起こしている特徴が、赤色矮星LHS 1140の周りを公転するLHS 1140bにも見られるというのです。
地球に対して月が常に同じ面を見せていても、地球上の私たちが月の模様はいつも同じだと思うくらいで大した影響はありませんが、太陽のような恒星に対して惑星が常に同じ面を向けた場合は状況が異なります。
惑星が太陽に対して潮汐ロックを起こすと、特定の面だけが常に昼の状況となるため、惑星表面の一部分だけが他の領域に比べて加熱される状況になります。
これにより表面が水に覆われた惑星では、恒星に対し背を向けている側は常に氷に覆われているのに、恒星に面している側では温暖な海が広がる状況になるのです。
液体の海を持つと考えられるLHS 1140bは、まさにそのような状態になっていると予測され、まるで「眼球」のような見た目だと考えられているのです。
研究チームは、「LHS 1140bは、太陽系外惑星の表面に液体の水が存在することを間接的に確認できる最善の候補かもしれない」と述べています。
さらに楽観的な予測として、研究チームは恒星との位置関係から、LHS 1140bの眼球部分の中心は非常に快適な20℃程度の表面温度になる可能性があると話しています。
そうなれば、この惑星には生命が存在する可能性も非常に高くなると考えられます。
今回の報告は、地球から48光年離れた場所に、氷に覆われながらも気温20℃の快適な海を持ち、常に昼の状態となっている惑星が存在する可能性を示すものです。
そんな惑星があるとしたら非常に魅力的です。宇宙旅行をするようなSF作品なら、この惑星は「宇宙のリゾート地」として登場するかもしれません。
とはいえ、これらすべては証明されたわけではなく、1つの可能性に過ぎません。
今後、さらなる調査によって「眼球惑星」に対する理解を深めていく必要があるでしょう。