「いつ来るの?」が結局、一番コワイ
研究チームは今回、恐怖を感じる出来事がいつ起こるかわからないという「不確実性」が、どのようにして人々の不安感を増大させるかを検証することにしました。
実験では被験者として42名の健康な成人男女に協力してもらっています。
実験において被験者は椅子に座らされ、予測できないタイミングで軽度の電気ショックを受ける可能性があります。
このとき、被験者は椅子に1秒座り続けるごとに1セントの現金報酬を得ることができますが、反対に電気ショックを回避するためにいつでも好きなタイミングで椅子を離れることもできました。
そしてチームは、恐怖体験の「不確実性」が被験者の不安感に与える影響を調べるため、2つの実験シナリオを作成しています。
1つ目は電気ショックがいつ来るかわからない「不確実性が大」のシナリオです。
ここで被験者は椅子に座り、「10秒以内のどこかのタイミングで電気ショックが発生する可能性がある」と言われます。
例えば、3秒でビリッと来るかもしれませんし、8秒まで何も起こらないかもしれません。あるいは10秒待っても電気ショックが来ないパターンもあります。
2つ目は電気ショックが来るタイミングが明確にわかっている「不確実性が小」のシナリオです。
ここで被験者は椅子に座り、「○秒後に電気ショックが発生する可能性がある」と言われます。
何秒後に電気ショックが来るかが予測できるので、こちらは不確実性が小さくなります。
また、どちらのシナリオでも全体的な電気ショックを受ける確率は同じに設定しました。
被験者の感じた不安感の大きさは、実験中の行動モニタリング(椅子から離れた頻度や獲得できた報酬額など)や自己申告アンケートで測定しています。
不確実性が大きいほど、不安感が増大
実験の結果、被験者の不安レベルは事前の予想どおり、シナリオ1の「不確実性が大」のときに最大化されることが確かめられました。
電気ショックがいつ来るかわからないシナリオは、電気ショックまでの明確なカウントダウンがあるシナリオに比べて、被験者の不安感を大幅に増大させることが判明したのです。
これは被験者の行動モニタリングや自己申告のどちらでも明らかでした。
不確実性が高いシナリオのときほど、被験者は椅子を離れる頻度が多く、最終的に得られた報酬額も平均17.8%少なくなっていたという。
この結果は、電気ショックという恐怖の出来事そのものよりも、電気ショックが来るか来ないかわからない「宙吊りの時間」こそが、人々の恐怖や不安感を最も高めることを示唆するものでした。
チームはこの理由について「不確実性に恐怖を感じることに進化上のメリットがあるのではないか」と考えます。