「頭内爆発音症候群」とは
頭内爆発音症候群(EHS:Exploding head syndrome)は、寝入る直前や目覚めた直後に短時間の大きな幻聴が発生する症状を指します。
これは睡眠障害の一種である「睡眠時随伴症」に分類されており、睡眠麻痺や悪夢などと同じく「睡眠に関連する異常行動・好ましくない体験」の1つだと考えられています。
頭内爆発音症候群の典型的な症状としては、「寝入る直前(覚醒から睡眠への移行中)に、大きな音が聞こえたり、頭の中で爆発するような感覚が生じたりする」というものです。
聞こえる音は様々で、この幻聴を体験した人は、その音を「爆発音」「銃声」「ドアがバタンと閉まる音」「叫び声」などと表現します。
共通する点は、その音が常に短く(数秒以下)、非常に大きいということです。
また幻聴なので、周囲には明らかな外部音源が存在しません。
そして、頭内爆発音症候群を経験した人の中には、音と共に「閃光が見える」などといった一時的な視覚障害(幻視)を報告する人もいます。
加えて、「強い熱を感じた」「上半身に電気が流れるような感覚があった」という報告もあるようです。
利用可能なデータが不足しているため、頭内爆発音症候群の患者の割合の正確な数字を知ることはできませんが、それでもいくつかの研究は、「健康な成人の10%以上が、生涯で1度は頭内爆発音症候群を経験している」と報告しています。
またヨーク大学のデニス氏らの2020年の研究では、オンラインアンケートに答えた参加者の3分の1が、生涯で少なくとも1回は頭内爆発音症候群を経験していると分かりました。
「頭内爆発音症候群」という名称自体がほとんど知られていないため、経験した人はそのことを意識していなかったり忘れていたりするかもしれませんが、この割合からすると、実は私たちも過去に爆発音を聞いている可能性があります。
そして、この症状は遅くとも1876年には専門家たちに認知されており、1988年からは現在の名称が使われています。
ちなみに、頭内爆発音症候群のような症状を報告した最も古い文章は、1600年代にフランスの哲学者「ルネ・デカルト」の伝記の中に見られるようで、彼もまた、寝る寸前に頭の中で爆発音を聞いた可能性があります。
では、頭内爆発音症候群の原因はいったい何なのでしょうか。