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クルーズ客船を真っ二つにして延長する工事 / Credit:Windstar Cruises(Youtube)_How to Stretch a Ship(2019)
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クルーズ客船を真っ二つ!9週間で巨大船を造るダイナミックな「船体延長工事」 (2/2)

2024.09.11 Wednesday

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たったの9週間で工事完了!?船体延長工事の映像

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船体延長工事は昔から存在する / Credit:Windstar Cruises(Youtube)_Windstar Cruises Cut The Ship In Half(2019)

既存のクルーズ客を半分に切断するという「船体延長工事」は、新しいアイデアではなく、クルーズ客船特有の工事でもありません。

第二次世界大戦直後には既に船体延長工事は行われており、造船業者たちは軍艦を巨大化していたようです。

現在ではよく知られた手法になっており、クルーズ客船を数十メートル延長させることを専門とする造船所も存在します。

では、実際の様子を見てみましょう。

まず、エンジニアは元になるクルーズ客船の設計図を確認したり、実物に乗って何百もの測定を繰り返し行います。

これらが終わると、延長部分として追加される「新しい胴体」を設計します。

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既存のクルーズ客船を切断。切断面に合うよう新しい船体を設計する。 / Credit:Windstar Cruises(Youtube)_Windstar Cruises Cut The Ship In Half(2019)

既存のクルーズ客船が半分に切断されるということは、それらを繋いでいた何千ものパイプやワイヤー、ケーブルも切断されることになります。

当然、新しい胴体が挿入された時には、それら切断されたパイプやワイヤーを繋がなければいけません。

新しい胴体の設計図は、すべての切断面がズレないよう正確に設計されていなければいけないのです。

また、新しい胴体(客室)のシステムが既存のシステムに負荷をかける場合には、既存の設備をアップグレードする準備もしていなければいけません。

そして実際に新しい胴体が建造されると、まるでアパートをスライドさせるかのように、半分に切断されたクルーズ客船の間に挿入されます。

ちなみにクルーズ船の切断には数百人にも及ぶ作業員が動員され、ミリ単位の精度を保つためにレーザーガイド(レーザー光を使用して切断ラインを明示する補助器具)を用います。

しかも、切断の順番によっては特定の部位に膨大な力が加わってしまうため、どの部分をどの順番で切断するかが慎重に計画されています。

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船体延長工事の実際の映像。たった9週間で工事が終了することも / Credit:Windstar Cruises(Youtube)_Windstar Cruises Cut The Ship In Half(2019)

新たな胴体が挿入され後は、すべての面を溶接していきます。

まずは船体やデッキなどの外側を結合し、その後、何千ものケーブルやダクト、ワイヤーを再接続していきます。

その間、別のチームは船の外で、船全体の塗装を行っています。

最後には電気・機械・油圧などのすべてのシステムを徹底的にテストし、長い船旅に耐えられるか強度が確かめられます。

ある工事では、新しい船体の設計を含め、プロジェクト全体で9カ月ほどかかりますが、クルーズ客船の工事自体はわずか9週間で完了します。

わずか2カ月の休止期間で巨大なクルーズ客船へと生まれ変わるのだから、以前のクルーズ客船を知っている人からすると驚きです。

もしかしたら今後、船体延長工事によって巨大化したクルーズ客船に乗ることもあるかもしれません。

その時には、その船が過去に真っ二つにされたことをイメージしてみてください。

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