ロックダウン中に月面温度が8〜10℃も下がっていた!
本調査では、NASA(アメリカ航空宇宙局)の月周回無人衛星「ルナー・リコネサンス・オービター」が収集した月面の温度データが使用されました。
ルナー・リコネサンス・オービターは過去数十年にわたり、月面の平均温度データを記録し続けています。
チームは今回、月面の温度データが収集されている6つの場所に焦点を当てました。
その中には、月面の西側にある「嵐の大洋(Oceanus Procellarum)」と呼ばれるエリアや、月面の北東に位置する「晴れの海(Mare Serenitatis)」、月面の北部にある「雨の海(Mare Imbrium)」といったエリアが含まれています。
6つのスポットは表面積900〜2500平方キロメートルの範囲となっています。
そしてチームは最も厳しいロックダウンが世界規模で行われた2020年4〜5月を境に、その前後3年間の月面温度を分析。
2017年〜2023年の計7年間における月面6カ所の夜間平均温度を比較し、グラフにまとめてみました。
その結果、6カ所すべてにおいて、2020年4〜5月の間に夜間平均温度が有意に下がっている証拠が見つかったのです。
全体の平均値を取ると、ロックダウン中に月面の夜間平均温度は8〜10℃も下がっていることが判明しました。
2020年の間は一貫して月面温度が下がっており、ロックダウンが緩和して人的活動が世界的に再開された2021年以降に月面温度が再び元の状態へと戻っていました。
チームはこの結果が太陽活動や季節的な気温変動のせいではないことも確認しており、月が一時的に冷えたのは地球の放射熱の減少によるものだと断定しています。
しかし、ロックダウンによる人的活動の減少が直接的に月面を冷やすことにつながるとは驚きでしょう。
今回の研究は、地球上の人間活動が月のような遠く離れた天体の温度にさえも影響をもたらすことを浮き彫りにした貴重な成果です。