トリコデルマ菌は植物の頼もしい味方
トリコデルマ菌は、ほぼすべての土壌中に存在するカビの一種です。
屋内の建材や畳に発生すると住宅をカビ臭くする原因ともなりますが、農業分野では以前から「有用菌」として利用されてきました。
トリコデルマ菌には土の中で植物の根っこに定着し、病原菌による病害を防いだり、植物の成長を促してくれる働きがあるのです。
そのため、トリコデルマ菌は「植物生育促進菌類(Plant Growth Promoting Fungi:PGPF)」の一つに数えられています。
これまでの研究によると、トリコデルマ菌の分泌する代謝産物には病原菌の成長を抑制しながら植物の成長を刺激する効果があることが明らかになっていました。
菌類の働きで植物の主根や側根が長くなり、土壌からの栄養吸収率が有意にアップするのです。
実際に、今回の研究で対象としたトリコデルマ菌の一種「トリコデルマ・ハルチアナム(Trichoderma harzianum)」のいるトマト畑では、菌のいないトマト畑に比べて、種子の発芽が促進され、水分や塩分、低温、熱ストレスへの改善が得られることがわかっています。
その一方で、研究者たちは以前から「音響刺激を使うことでトリコデルマ菌の成長をより活発化させられるのではないか」と考えました。
過去の先行研究では、ある種の音の周波数が微生物や菌類の成長および活動に変化をもたらすことは十分にわかっています。
もし音響刺激でトリコデルマ菌の成長が促進できれば、植物の生態系にもプラスの作用が現れるかもしれません。
そこで研究チームは今回、トリコデルマ・ハルチアナムを対象にホワイトノイズを聴かせる実験を行いました。