コナン細菌は「世界最強の放射線耐性」の持ち主だった
生命体をはじめとした物体が受ける被曝量の単位は「グレイ(Gy)」で示されます。
これまでの研究によりますと、私たち人間は全身に3〜5グレイの放射線を浴びると、60日以内に半数が死亡します。
さらに7〜10グレイに及ぶと、ほぼ全員が死に至るとされています。
高濃度の放射線は細胞中の水分子を破壊し、活性酸素を作り出すことで、DNAやタンパク質の損傷を引き起こすからです。
DNAやタンパク質の損傷が修復不能なレベルになると、細胞は正常な働きを保てなくなり、細胞死(アポトーシス)が誘導されます。
その過程で細胞のがん化や組織障害、臓器不全を起こし、最終的に死に至ります。
これは人間だけでなく、あらゆる生物にとっても同じことです。
ところがコナン細菌は違いました。
コナン細菌がどれだけの放射線量に耐えられるかを検証した実験では、なんと驚異の2万5000グレイに耐えられることが示されたのです。
さらにそれだけではありません。
米ノースウェスタン大学(NU)による2022年の研究で、コナン細菌を乾燥させて冷凍した場合(※)、人間の致死量の2万8000倍に相当する14万グレイの放射線量に耐えられるようになったのです(Astrobiology, 2022)。
(※ 放射線は細胞内の水分子に作用して、活性酸素を発生させます。乾燥させて冷凍すると、細胞内の水分子が極めて少なくなるので、活性酸素が著しく低下し、それだけ放射線耐性も高まります)
これはあらゆる生命体の中でも、異例の放射線耐性の高さでした。
これを受けて、コナン細菌は「世界で最も放射線に強い生物」としてギネス記録に認定されています(Guiness World Records)。
しかし最も気になるのは「なぜコナン細菌はこれほど強い放射線耐性を持つのか」ということでしょう。
この謎については、先と同じノースウェスタン大学の最新研究によって解明されました。