組織内の3分の1以上の支持で組織全体の行動が変わる
「魔法の三分の一の法則(The Law of the Magic Third)」とは、組織内の約3分の1のメンバーが特定の意見や行動を支持すると、組織全体がその提案を採用する傾向が高まるという考えです。
アメリカのジャーナリストであるマルコム・グラッドウェル氏が、著書『Revenge of the Tipping Point』の中で提唱した概念で、基礎となる考えは77年にハーバード大学のロザベス・カンター教授が発表した研究に基づいています。
カンターが提唱していたのは組織内で少数派の割合が30%を超えると、組織の意思決定や文化に実質的な影響を与えるというものです。
この研究によると、男性主体だった組織に女性が参加することで、その存在が新たな意見や視点をもたらし、組織の議論や意思決定に影響を与えることが明らかになっています。(研究が発表された70年代は女性の社会進出が本格化した時代だった)
たとえば、9人の取締役会に女性が1人だけ加わった場合、その意見は多数派に押されて取り入れてもらえる機会は少なくなります。
では女性が2人いればどうでしょうか。
状況は少し変わるかもしれませんが、組織の方針はここでは変わりません。
しかし、女性が3人加わり、取締役会の3分の1を占めると、組織の意思決定において大きな影響力を持つようになります。
カンターの研究は、少数派が一定の割合を超えることで、組織内の考え方や行動が劇的に変化する可能性を示しているのです。
経営に携わっていない労働者たちからすると、急に会社の方針が転換されて驚くこともあるかもしれません。
彼らの目には、経営陣に追加された1人か2人が、組織全体の考えをいきなり変えたように見えるからです。
では、組織やグループでは、なぜこのような変化が生じるのでしょうか。