「例外」が「例外でなくなる」
「魔法の三分の一の法則(The Law of the Magic Third)」は学術的な用語ではありませんが、この考えのポイントは、グループには「例外が例外でなくなる」タイミングがあるということです。
グループ内の半数以上の意見が同じであれば、グループ全体がその意見に流れるのは当然です。

では、10分の1の人たちだけが特定の意見を支持している場合はどうでしょうか。
彼らの意見は少数派というよりも「例外」です。
そのため、1割の例外的な意見は、グループの意思決定に大きな影響を与えることはできません。
しかし、その意見を支持する人が3分の1を超えるとどうでしょうか。
まだ多数派ではないものの十分な規模であり、明らかに「例外」としては見られなくなります。
他のメンバーは、3分の1の意見を無視するのではなく、真剣に考え始めます。
そして私たちには、ある状況で自分の意思を決定する際に、他人の意思や行動を参考にする傾向(社会的証明という)があります。
強い意見を持っていない大部分の人は、グループの3分の1が同意見だった場合、その意見を真剣に捉え、自分の考えに取り入れるようになるのです。
こうした経緯で、グループの全体的な意見は急激に変化します。
このような傾向は、カンターの研究から「黄金の3割(Critical Mass Theory)」としても知られています。
この理論でも、集団の中でその存在を無視できないグループになるための分岐点は30%であり、それを超えることで集団に変革が生じると考えられています。
最近だと、多くの企業が経営的成功に繋がっているようには見えないにもかかわらず、DEI(多様性実現の取り組み)を積極的に取り入れていることを奇妙に感じているかもしれません。
しかし、こうした組織の意思決定にも「魔法の三分の一の法則」が働いている可能性があります。
ただこうした事例を考えると、組織を変革する際の現実的な道筋が見えてきます。