シャーマンに近い存在と考えられてきた魔女

それでは魔女狩りの対象となった魔女とはどのような存在だったのでしょうか?
魔女ははじめから迫害の対象であったわけではなく、古代においてはヨーロッパの片隅で薬草を操り、星の導きを読んで静かに暮らしていたのです。
彼女たちは人々の病を癒やし、産声を聞き届け、豊穣を願う儀式を行う賢者でありました。
そのようなこともあって静かなる畏敬の念をもって迎えられていたのです。
ところが時代が移り、唯一神を奉じるキリスト教が世界を覆うと、これらの魔女たちは一転して異端とみなされる運命を辿ります。
精神が肉体を凌駕し、男が女に優位たるべしという思想のもと、魔女はもはや尊敬の対象ではなく、恐怖の象徴となりました。
民衆にとって親しみ深かった魔術の担い手は、悪魔の眷属としての烙印を押され、やがて魔女狩りという狂乱の時代が幕を開けたのです。
15世紀の終わり、異端審問官たちは『魔女への鉄槌』なる書物を著し、悪の根源は女性にありと断じました。
曰く、女とは信仰心が薄く、悪魔に魅入られるものであり、しばしば新生児を捧げ、邪悪なる魔術を働くものだと。
この恐るべき言葉は瞬く間に広まり、魔女裁判はヨーロッパの各地で繰り広げられることとなります。
しかし、魔女狩りの炎を煽ったのは、宗教だけではありませんでした。
人々は自らの不幸を隣人の幸福のせいとし、時に嫉妬と恐怖から、村の誰かを魔女として訴えたのです。
牛乳を奪う魔術、病をもたらす呪い、嵐を呼ぶ力——そんな根拠のない疑いが、人々の間にまことしやかに囁かれ、恐怖が恐怖を生む悪循環が生まれました。
こうして、異端とされた賢者たちは裁かれ、拷問の果てに自白を強要され、火刑台に立たされました。
やがて、狂気の嵐が去ったとき、人々はようやく気がつくのです。
彼女たちは本当に魔女だったのか、それともただの知恵を持つ女性たちだったのか——と。