ジャガイモからミルクを搾る?ジャガイモに乳タンパク質を作らせることに成功
ジャガイモからミルクを搾る?ジャガイモに乳タンパク質を作らせることに成功 / Credit; Molecular Farming Startup Finally Foods Emerges From Stealth with Pre-Seed Funding to Develop Casein Proteins
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ジャガイモからミルクを搾る?ジャガイモに乳タンパク質を作らせることに成功

2025.02.11 11:30:05 Tuesday

かつて、牛乳の生産には必ず牛が必要とされていました。

しかし、急速に発展する分子農業技術のおかげで、牛に頼らずとも乳タンパク質を作り出す新たな可能性が現れています。

イスラエル発のスタートアップ『Finally Foods』は、AI駆動型の遺伝子工学を活用し、ジャガイモを生体工場として改変。

従来、牛乳の主要タンパク質であるカゼインを、ジャガイモ内で生成することに成功しました。

この革新的なアプローチは、従来の酪農がもたらす温室効果ガスの大量排出や莫大な資源消費といった環境問題の解決、さらにはコスト効率の向上に大きく貢献する可能性があります。

果たして、ジャガイモから抽出されるカゼインは、従来の乳製品が持つ味わいや機能性を再現し、次世代のチーズやヨーグルトへと進化するのでしょうか。

本記事では、ジャガイモを利用した乳タンパク質生産の背景、技術的な詳細、そしてその経済面・環境面でのメリットについてわかりやすく解説します。

Molecular Farming Startup Finally Foods Emerges From Stealth with Pre-Seed Funding to Develop Casein Proteins https://www.greenqueen.com.hk/molecular-farming-finally-foods-casein-protein-the-kitchen-hub/

植物にミルクを作らせる分子農業

ジャガイモからミルクを搾る?ジャガイモに乳タンパク質を作らせることに成功
ジャガイモからミルクを搾る?ジャガイモに乳タンパク質を作らせることに成功 / Credit: Molecular Farming Startup Finally Foods Emerges From Stealth with Pre-Seed Funding to Develop Casein Proteins. AI-Generated Image via Canva

伝統的な乳製品は、何世紀にもわたり人々の食生活に欠かせない存在でした。

しかし、その生産は牛の飼育に大きく依存しており、広大な土地や水資源を必要とするだけでなく、大量の温室効果ガスを排出するなど、環境面で多くの課題を抱えています。

実際、酪農業は世界全体の温室効果ガス排出の一因となっており、持続可能な社会の実現にとって大きな障壁となっています。

一方、現代の消費者は健康志向や環境意識の高まりとともに、従来の生産方法に代わる新たな技術への期待を強めています。

精密発酵や微生物発酵など、動物に依存しないタンパク質生産技術が次々と提案される中、完全な代替手段としてはまだ確立されていないのが現状です。

たとえば、精密発酵は高品質な製品を生み出す一方で、設備投資やエネルギーコストが高く、規模拡大のハードルとなっています。

また、微生物発酵では、複数のタンパク質を同時かつ効率的に生産することが技術的に難しいという課題も指摘されています。

こうした背景のもと、近年注目を集めているのが「分子農業」と呼ばれるアプローチです。

分子農業は、従来の微生物や精密発酵とは異なり、植物を工場として活用する技術。

植物は広大な農地で栽培できるため、大量生産が可能であり、設備投資や運用コストを抑えながら、持続可能な生産体制を実現できる点が大きな魅力となっています。

今回、イスラエル発のスタートアップ『Finally Foods』は、従来の動物由来タンパク質生産に替わる新たな手法として、ジャガイモを利用した乳タンパク質、特に牛乳の主要成分であるカゼインの生産技術を開発しました。

次ページAIが設計し人間が作る「ジャガイモミルク」

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