人間も性的ライバルの脅威から「精子の質」を変化させるのか?
動物界では、複数のオスが同じメスと交尾することが多々あるため、どのオスの精子が受精に一番乗りできるかを競う「精子競争(sperm competition)」の現象が広く見られます。
例えば、チンパンジーは多くのオスとメスが交尾をするため、オスはより多くの精子を生産し、より活発に動く精子を持つことで競争に勝とうとします。
一方で、人間は基本的には一夫一妻制が世界に広く浸透しているため、「精子競争は関係ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし私たちの社会でも浮気や不倫は日常茶飯事ですし、自分のパートナーが陰でこっそり別の相手と密会している可能性はあります。
そのため、人間の男性も性的ライバルの脅威を本能的に察知し、それに応じて精子の質を変化させている可能性が先行研究などで示唆されているのです。
特に1993年の研究では、カップルが長期間離れて過ごした後の性交では、通常よりも多くの精子が射精されることが示されました(Gordon S. Lynch, 1993)。
これは「離れている間にパートナーが他の男性と関係を持つ可能性がある」と無意識に判断し、より多くの精子を送り込む戦略が進化している可能性を示唆するものです。
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ただこれまでの研究は、パートナーと会わない「時間的な隔たり」の影響を調べたのみで、他の要因については調べられていません。
そこで研究チームは今回、「パートナーが浮気しているかもしれない」とか「彼女に男友達が多すぎる」といった男性側の思いが、精子の質にどれだけの影響を及ぼすかを調べることにしました。