実験データで見る“不良”への愛情

謎を解明するため、研究者たちはまずオンラインアンケート調査を実施しました。
対象となったのは、実際に「お気に入りの不良キャラ」を挙げることができた女性47名です。
彼女たちには、自己愛(ナルシシズム)、遊び的恋愛観(ルーダス)、刺激追求(センセーション・シーキング)、ヘルパー衝動など、人格特性を測定する質問が行われました。
また、フィクション上のキャラクターに対する一方的な恋愛感情を示す「ロマンティック・パラソーシャル・リレーションシップ(RPSR:以下架空恋愛と表記)」の強さも評価されました。
さらに、「自尊感情(セルフエスティーム)」「自分が持つ力の感覚(パワー感)」「自由度(オートノミー)」「作品視聴後に空想がどれほど続くか(RII)」などの心理的側面についても質問されました。
結果として、特に注目されたのは、「ルーダス型の恋愛スタイル(軽い冒険的な恋愛を好む)」や「新奇性やスリルを求める刺激追求の高さ」を持つ女性ほど、不良キャラへの架空恋愛が強い傾向を示した点です。
これは、普段の生活では得られない刺激や危うさを、フィクションの世界で楽しみたいという欲求が、ドラマや映画に描かれる「危険な魅力」を倍増させるからだと考えられます。
一方で、「助けてあげたい」というヘルパー衝動や、自己愛(ナルシシズム)は、予想ほど大きな影響を及ぼさないことも示唆されました。
さらに、不良キャラへの強い架空恋愛を抱く女性は、「自分が彼の存在を支配しているかのように感じる」や「作品の余韻を何度も空想して楽しむ(RII)」といった側面が強まる傾向も確認されました。
しかし、「自尊感情が劇的に高まる」や「自由度が増す」といった効果は、さほど顕著ではなかったようです。
研究チームは、こうした結果から、「危険な男」に惹かれる要因は、必ずしも「自己肯定感を満たす」や「相手を救いたい」という動機だけでなく、「強い刺激を味わいたい」という欲求と、現実のリスクがないフィクションならではの安全圏が大きく影響しているのではないかと考えています。