交尾相手に毒を盛る理由とは?
この行動だけを見ると「なんてヒョウモンダコのオスはひどいんだ」と思うかもしれません。
しかしその裏にはオスなりに切実な理由が隠されています。
実はヒョウモンダコのメスは交尾後にオスを食べる「性的共食い」を行うことがあるのです。
これはカマキリやクモの仲間によく見られる行動で、交尾後にオスを栄養源として利用することで、メスは産卵に必要なエネルギーを効率よく確保することができます。
またヒョウモンダコのメスはオスよりも体重が2倍ほどあるため、まともに喧嘩してもメスの方が強いです。
そこでオスは安全に交尾を終えて、逃げる時間を確保するために、毒を注入して一時的にメスを動けなくしていると考えられるのです。

また研究では、オスの唾液腺がメスの約3倍の大きさであることが確認されました。
これはオスが他の生物に対する毒使用とは別に、メスを麻痺させるための余分な毒を生成する必要があることを示唆しています。
このようなオスの戦略は進化的にも非常にユニークなケースです。
ところが一方で、研究者たちは「なぜオスが毒で麻痺させてまでメスから逃げようとするのかわからない」と指摘します。
ヒョウモンダコのオスはメスよりも寿命が短く、さらに交尾行動にかなりのエネルギーを消費するため、生涯のうちに1回しか交尾できずに死ぬ個体が非常に多いです。
交尾後にメスから逃げたとしても、また別のメスと交尾できる時間が残されている保証はありません。
それよりも子孫を確実に残したいなら、交尾相手のメスに食べられてしまった方がいい場合もあります。
なぜならメスの産卵には多大なエネルギーがかかりますし、さらにメスの母親はほとんど飲まず食わずで、長期にわたり卵を保持する必要があるからです。
そのため、オスが自らの体を栄養源として差し出した方が、メスの繁殖成功率も高まると考えられます。
カマキリやクモのオスにはそれを知っているかのように、大人しくメスに食べられる個体が多いのです。
ヒョウモンダコのオスはなぜメスに毒を盛ってまで生き延びようとするのか?
その謎を解明するには今後のさらなる調査が必要です。
もしかしたらヒョウモンダコのオスには、寿命が尽きる前にやるべき大切なことがあるのかもしれません。
まあ、生物には、いろいろな生き方が
あるんでしょう。とても勇気づけられます。
そりゃ一回で終わるよりは何回もしたいでしょう?
出来るかどうかっていう話じゃないんですよ、したいかっていう話ですから。