レーザー光を超固体に変換することに成功
レーザー光を超固体に変換することに成功 / Credit:clip studio . 川勝康弘
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レーザー光を超固体に変換することに成功 (2/3)

2025.03.11 17:00:12 Tuesday

前ページ半世紀越しの夢「超固体」を光で作り出す

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光が作る結晶

光が作る結晶
光が作る結晶 / Credit:clip studio . 川勝康弘

研究チームが注目したのは、フォトニック結晶波ガイド(周期的な微細構造をもつ導波路)という装置でした。

微細にエッチングされた格子構造によって、“Bound-in-the-Continuum(BiC)”という特別なモードが形成されます。

BiCは通常の光モードより損失が格段に少ないため、ここに励起子ポラリトンが集まると、凝縮して大きな“量子の波”を作りやすいのです。

次に研究チームは、一定間隔で繰り返し照射するパルスレーザーをこの波ガイドに当て、「励起子ポラリトン」を大量に生成しました。

パワーがあるしきい値を超えると、励起子ポラリトンが同じ運動量状態に一気に落ち込み、超流動(摩擦がほぼゼロの流れ)を示します。

さらに、運動量が0の状態だけでなく、有限の運動量をもつ状態にも同時に光が流れ込む「パラメトリック散乱(強い場で起こる非線形現象)」が起こり、装置内で「光同士がお互いを生み出す」ようなプロセスが見られたのです。

結果として、励起子ポラリトンはスペース上に縞模様(しまもよう)をつくり、まるで“固体”の結晶のように見える一方で、その全体が波として干渉し合い、滑らかに流れるという“流体”の特徴も同時に示しました。

干渉測定(光を重ね合わせ、波の位相や一致度を調べる方法)では、遠く離れた場所でも粒子同士が高いコヒーレンス(波がしっかり揃っている状態)を保っていることがわかり、“超流動”による摩擦の少ない流れが広範囲にわたっていることが示唆されます。

さらに、結晶格子のように見える縞模様の間隔は、レーザーの強さや粒子間の相互作用によって微妙に変化しました。

これまで“結晶”というと並進対称性が固定されているイメージがありますが、この場合は“伸び縮みする結晶”とも言える柔軟さを持ち、まるで固体と液体の中間のような振る舞いを見せたのです。

研究者たちは、これが量子力学的な対称性の破れ(本来保たれるはずの対称性が自発的に失われる現象)を光の実験系でも再現するうえで大きな一歩だと考えています。

今後、この縞模様がどのように振動するか(ゴールドストーンモードやヒッグスモードなど)を追跡し、超固体のさらなる特徴を解明していく方針だそうです。

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