奇妙な動きをするタカとの出会い

観察のきっかけは、米テネシー大学の動物行動学者ウラジーミル・ディネツ(Vladimir Dinets)氏が2021年の冬に体験した“偶然”でした。
ある冬の寒い朝、ディネツ氏が娘を学校へ送る途中、米国東部ニュージャージー州ウエストオレンジの交差点で赤信号に引っかかっていたときのことです。
ふと横を見やると、長い車列の左側に沿って歩道を低空飛行する一羽のクーパーハイタカが目に入りました。
クーパーハイタカは歩道すれすれを滑空したかと思えば、鋭く右側に90度ターンし、車と車の隙間を縫って向かいの住宅の庭へ飛び込んでいったのです。
こちらが実際の飛行ルートになります。

その住宅(家屋2番)では、大家族が住んでいて、夕食を前庭でとる習慣があり、翌朝には庭先に残ったパンくずや食べ残しがスズメやハト、ムクドリなどの小鳥をたくさん引き寄せることで知られていました。
クーパーハイタカの狙いはその鳥たちだったのです。
ディネツ氏はこの出来事に強く惹かれ、後日、車を“隠れ観察所”にして、計18日間にわたる観察を開始。
その結果、氏はタカの驚くべき狩りの仕組みに気づくことになります。
それは「ただ飛び出している」のではありませんでした。
タカは明らかに、ある特定の条件を待ち、計画的に動いていたのです。