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geoscience

地球の核から貴金属が「漏れ出ている」

2025.05.30 21:00:32 Friday

地球の中心部にある核は、わたしたちの足元よりはるかに豊富な金や白金族元素を蓄えた“究極の金庫”だと考えられています。

地球全体の金のおよそ99.999%以上が、厚さ約3000 kmのマントルの下に隠れた金属核に集中しているという推定もあります。

ところが、この巨大な金庫からごく微量の貴金属成分が漏れ出し、深部マントルを経てハワイの溶岩にまで到達している可能性が浮上しました。

ドイツ・ゲッティンゲン大学(UGOE)の研究チームは、ハワイ島の火山岩に含まれるルテニウムとタングステンの同位体比を超高精度で測定し、核由来の貴金属ルテニウムを“指紋”として初めて確認したと報告しました。

核由来の貴金属が地球表面に含まれている結果は、かつて地球の奥深くに沈んだと思われていたものたちが、予想よりも遥かに表層部に出現できることを示しています。

ある意味で地球表面は予想以上に核と物質のやり取りをしていたと言えるでしょう。

研究者たちはこの発見を「文字どおり金脈を見つけたようだ」との言葉で表現し、地球内部ダイナミクスへの新たな窓を開いたと強調しています。

研究内容の詳細は2025年5月21日に『Nature』にて発表されました。

Tapping into the World’s largest gold reserves https://www.eurekalert.org/news-releases/1084960
Ru and W isotope systematics in ocean island basalts reveals core leakage https://doi.org/10.1038/s41586-025-09003-0

金はどこへ消えた? 隕石説 vs. リーク説の最終ラウンド

金はどこへ消えた? 隕石説 vs. リーク説の最終ラウンド
金はどこへ消えた? 隕石説 vs. リーク説の最終ラウンド / Credit:Canva

地球の内部は大きく分けて核・マントル・地殻の三層構造になっています。

中心部の核は主に鉄とニッケルなどの金属でできており、岩石質のマントルと明瞭に性質が異なります。

実は、私たちが普段目にする金などの貴金属のほぼすべては、この金属核に集中していると考えられています。

地球がまだ「溶けた火の玉」だった46億年前、鉄はマグマの海を沈みこみ、金やルテニウムなど貴金属を道連れにして核をつくりました。

そのため核は途方もない貴金属庫となり、もし掘り出せれば地球全土を50 cmの金メッキで包めるとまで言われます。

では、地表に存在するわずかな金は一体どこから来たのでしょうか?

従来の説は、地球形成後期の隕石の衝突によって後から供給されたというものです。

一方で近年になって現れたもう1つの説では、地球内部からの“リーク”、つまり核そのものから金属が漏れ出してマントルを通じ運ばれてきたというものです。

例えばカナダ・バフィン島の火山岩からは通常よりヘリウム3が多く検出され、タングステンにも異常が見つかっています

これまでヘリウム(3He⁄4He)やタングステン(182W⁄184W )などの同位体の異常から「核の匂い」として議論されましたが、これらはマントル由来でも起こり得るため決定打になりません。

そこでドイツ・ゲッティンゲン大学のニルス・メスリング氏ら研究チームは、核とマントルで明確に濃度の違う元素に着目しました。

それが白金族の希少な金属元素で、地球の核に濃縮されているルテニウムです。

研究チームは、この元素のごくわずかな“指紋”を追跡することで、核からの物質がマントルや火山を通じて地表に達しているかどうか確かめようとしたのです。

次ページ核に沈んだはずの貴金属が地表に出てくる

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