金はどこへ消えた? 隕石説 vs. リーク説の最終ラウンド

地球の内部は大きく分けて核・マントル・地殻の三層構造になっています。
中心部の核は主に鉄とニッケルなどの金属でできており、岩石質のマントルと明瞭に性質が異なります。
実は、私たちが普段目にする金などの貴金属のほぼすべては、この金属核に集中していると考えられています。
地球がまだ「溶けた火の玉」だった46億年前、鉄はマグマの海を沈みこみ、金やルテニウムなど貴金属を道連れにして核をつくりました。
そのため核は途方もない貴金属庫となり、もし掘り出せれば地球全土を50 cmの金メッキで包めるとまで言われます。
では、地表に存在するわずかな金は一体どこから来たのでしょうか?
従来の説は、地球形成後期の隕石の衝突によって後から供給されたというものです。
一方で近年になって現れたもう1つの説では、地球内部からの“リーク”、つまり核そのものから金属が漏れ出してマントルを通じ運ばれてきたというものです。
例えばカナダ・バフィン島の火山岩からは通常よりヘリウム3が多く検出され、タングステンにも異常が見つかっています
これまでヘリウム(3He⁄4He)やタングステン(182W⁄184W )などの同位体の異常から「核の匂い」として議論されましたが、これらはマントル由来でも起こり得るため決定打になりません。
そこでドイツ・ゲッティンゲン大学のニルス・メスリング氏ら研究チームは、核とマントルで明確に濃度の違う元素に着目しました。
それが白金族の希少な金属元素で、地球の核に濃縮されているルテニウムです。
研究チームは、この元素のごくわずかな“指紋”を追跡することで、核からの物質がマントルや火山を通じて地表に達しているかどうか確かめようとしたのです。