18秒で充電するメカニズム

では、なぜこれほど高速な充電・放電が可能なのでしょうか?
バッテリーの電極や溶液の正確な化学的情報は(企業秘密で)公開されていないものの、もし仮に正極にニッケル・マンガン系(NMC)、負極にリチウムチタン系(LTO)を組み合わせれば、内部抵抗を極端に下げてることが可能だと考えられます。
またBASFの公式リリースによれば、VarEVoltのバッテリーパックはセル全体を絶縁冷却液に沈める液浸冷却方式を採用し、外装ケースにはガラス繊維強化ポリアミド樹脂Ultramid B3EG7、セルホルダーにはUltramid A3EG6 EQが使われているとのこと。
「セルを直接冷やす絶縁液」×「軽量高剛性のガラス繊維入りナイロン外装」という組み合わせは、高熱負荷でも均一温度を保ち、火災リスクを下げ、構造を簡素化しながら軽量化と量産性まで確保できるのが大きな魅力と考えられます。
またバッテリーの中身が“レゴブロック”のように組み替え可能な独自構造にあることも大きな特徴です。
RMLはセルひとつひとつを小さなモジュールにまとめ、必要に応じて積み増したり並べ替えたりできる設計を採用しました。
このおかげで、最高出力を優先した“瞬発力仕様”にも、長い航続距離を稼ぐ“持久力仕様”にも自在にチューニングできます。
実際にポール・ディキンソンCEOは「走る距離を伸ばすことも、パワーを突き詰めることも、その両方の折り合いを付けることも思いのまま」と語っています。
こうした柔軟性を実現するため、RMLは既製品を流用せずゼロからセルと冷却系を設計し直しました。
もともと同社はル・マン用ハイブリッド車や中国・NIOの電動スーパーカーEP9の電池開発で鍛えられており、モータースポーツ級の放熱や高電流制御のノウハウをそのまま持ち込めたのです。
さらに、この技術は“名車の延命措置”にも使われます。
ラフェラーリやマクラーレンP1といった往年のハイブリッド超車に載せ替えられるレトロフィットキットが計画されており、RMLの取締役マイケル・マロックは「クルマ側が耐えられれば、従来の最大8倍ものパワーを引き出せる」と胸を張ります。