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注意力は限られた資源である。他人とのアイコンタクトに割くように / Credit:Canva
psychology

他人とのアイコンタクトを意識すべき理由とは?【注意力は限られた資源である】

2025.06.20 20:00:45 Friday

最近、見知らぬ人とアイコンタクトを交わしたり、会釈したり、軽く会話したりしたのはいつですか?

もしかしたら、「思い出せない」という人も少なくないかもしれません。

スマホの画面は、現代人にとって“新しい顔”になりました。

隣の人と目を合わせる代わりに、私たちは今日もガラス越しに“自分だけの世界”とにらめっこを続けています。

この社会現象に警鐘を鳴らしているのが、米マサチューセッツ大学アマースト校(UMass Amherst)の社会心理学者リンダ・R・トロップ氏です。

彼女は心理的寛容(psychological generosity)の視点から、見知らぬ人とのちょっとした関わりがいかに私たちの社会的つながりや幸福感に貢献するかを論じています。

その核心は、「注意力」という限られた資源の使い方にるようです。

Making eye contact and small talk with strangers is more than just being polite − the social benefits of psychological generosity https://theconversation.com/making-eye-contact-and-small-talk-with-strangers-is-more-than-just-being-polite-the-social-benefits-of-psychological-generosity-252477

注意力は「限られた資源」

私たちの脳は、一度に全ての情報を処理することはできません。

世界は情報であふれていますが、人間の認知システムには処理能力の限界があるため、「選択的に注意を払う」ことによって、取捨選択を行いながら現実を認識しているのです。

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情報過多な社会。注意力は有限 / Credit:Canva

この「注意」は、まさに時間やエネルギーと同じく“有限な資源”として扱われるべきものです。

そして、その配分はほとんどの場合、自分にとって意味があると判断された情報に集中される傾向があります。

例えば、目の前のスマートフォンの通知、SNSの反応、次の予定、目的地へのナビゲーションなど、現代人は「自己関連性の高い情報」ばかりに注意を注いで生活しています。

この傾向は、一見すると効率的な情報処理に見えます。

しかし実際には他者との接触や社会的なつながりを無意識に削ぎ落としているのです。

その結果、公共の場では「他人の存在を視界から消す」ような態度が蔓延します。

イヤホンを装着し、視線を落とし、誰とも目を合わせない。

この行動は周囲から見ると、まるで「自分の存在を否定された」ような印象を与えかねません。

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自己関連性の高い情報ばかりに注意が向いている。社会的なつながりがそぎ落とされ、孤立する / Credit:Canva

でもこれが今では当たり前になっています。

こうした無関心の連鎖は、社会的孤立(social isolation)を加速させます。

アメリカでは、成人の半数以上が“深刻な孤独”を感じているという調査結果もあります。

つまり、注意力というリソースが「自分だけのため」に使われるとき、社会全体から他者への関心が薄れ、私たちは共に存在していても“つながっていない”状態に陥るのです。

では、どうすればこの孤立のループから抜け出せるのでしょうか?

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