注意力は「限られた資源」
私たちの脳は、一度に全ての情報を処理することはできません。
世界は情報であふれていますが、人間の認知システムには処理能力の限界があるため、「選択的に注意を払う」ことによって、取捨選択を行いながら現実を認識しているのです。

この「注意」は、まさに時間やエネルギーと同じく“有限な資源”として扱われるべきものです。
そして、その配分はほとんどの場合、自分にとって意味があると判断された情報に集中される傾向があります。
例えば、目の前のスマートフォンの通知、SNSの反応、次の予定、目的地へのナビゲーションなど、現代人は「自己関連性の高い情報」ばかりに注意を注いで生活しています。
この傾向は、一見すると効率的な情報処理に見えます。
しかし実際には他者との接触や社会的なつながりを無意識に削ぎ落としているのです。
その結果、公共の場では「他人の存在を視界から消す」ような態度が蔓延します。
イヤホンを装着し、視線を落とし、誰とも目を合わせない。
この行動は周囲から見ると、まるで「自分の存在を否定された」ような印象を与えかねません。

でもこれが今では当たり前になっています。
こうした無関心の連鎖は、社会的孤立(social isolation)を加速させます。
アメリカでは、成人の半数以上が“深刻な孤独”を感じているという調査結果もあります。
つまり、注意力というリソースが「自分だけのため」に使われるとき、社会全体から他者への関心が薄れ、私たちは共に存在していても“つながっていない”状態に陥るのです。
では、どうすればこの孤立のループから抜け出せるのでしょうか?