全ての放置ショッピングカートを回収すると、「ガソリン車80台分」のCO₂が排出される
調査の結果、カート1台を新たに製造すると約65kgものCO₂が排出されることが分かりました。
一方で、放置カートをディーゼルバンで回収し店舗に戻すだけなら0.69kgでした。
また損傷カートを工場に運んで再生(修理・再メッキなど)しても5.5kgです。
つまり、放置カートを回収・修理する方法は、新規製造に比べて92~99%もCO₂排出を減らせるという驚きの事実が示されたのです。
さらに、「一台のカートを何度も回収して使い続けても、新品を作るほどの環境負荷にはならない」という計算もされています。
実際、同じカートをディーゼル車で93回回収しても、新品1台分のCO₂排出量と同じ程度にしかなりません。
つまり、どんなに手間をかけて回収しても、新規製造を繰り返すより環境への負担は圧倒的に少ないということです。
では、イギリスで毎年放置される52万台のカートをすべて回収することは、どれほどの環境負荷を与えるものとなるのでしょうか。
研究チームは、「合計343トンものCO₂が排出される」と推定しています。
これはガソリン車80台が1年間の走行した際に排出されるCO₂と同量です。
たとえ環境負荷が一番少ない方法を選んだとしても、これほどのCO₂が排出されるとは驚きです。
これにショッピングカートの修理が加わったり、新規製造が必要になったりすると、CO₂排出量は一気に跳ね上がることになります。
ちなみに、放置カートによる影響はCO₂排出だけにとどまりません。
川や水路に捨てられたカートはごみや落ち葉をせき止め、洪水の原因になることもあります。
ボートや車の損傷、歩行者や子どものケガ、都市景観の悪化、公園や道路の「使いにくさ」も大きな問題です。
また、カートの回収や修理にかかるコストは小売店の経営にも重くのしかかっています。
こうした状況を受けて、研究チームは物理的な対策(バリア設置・車輪ロック・コイン返却式・監視カメラの導入)や、心理的アプローチ(「監視されていますよ」と感じさせるサインや、「戻すのが当たり前」という社会的な空気作り)が重要だと指摘しています。
そして今後は、より環境に優しい素材や、簡単に修理できるカートの開発も求められています。
買い物のあと、つい手近な場所にショッピングカートを置きっぱなしにしたり、自分の都合の良い場所へと持っていきたくなったりするでしょうか。
その一台が環境にも社会にも思わぬダメージを与えていることを、ぜひ心にとめてください。