イギリスでは毎年52万台のショッピングカートが放置されている
ショッピングカートは買い物客にとって当たり前の道具ですが、一方で世界各地の街や自然の中で「迷子」になっています。
イギリスでは、毎年およそ52万台ものカートが店舗の外に持ち出され、戻されずに放置されていると推計されています。
この問題は、景観の悪化や事故の原因、さらには環境破壊や経済的損失など、さまざまな社会的コストを生んでいます。
では、なぜ人々はカートを所定の場所に戻さないのでしょうか。
アンケート調査によれば、「回収ポイントが駐車場から遠い」「荷物を車に積んだあと戻すのが面倒」といった理由が最も多く、「子どもや若者が遊び半分でカートを持ち出してしまう」ケースも多いことが分かりました。
国や地域によっては、「カート自体が生活道具として盗まれ再利用される」ケースもあり、単純な「マナー問題」ではない背景もあります。
こうした現状を受け、研究チームは「放置カートが本当にどれだけ環境に負荷をかけているのか」を明らかにするため、ライフサイクルアセスメント(LCA)という方法を使いました。
この手法は、カート1台が「原料採掘→製造→運搬→使用→放置→回収→再生」という一連の流れの中で、どこでどれだけCO₂(二酸化炭素)が排出され、どれだけの資源が使われるかを細かく調べるものです。
具体的な調査はイギリス・コヴェントリー市の郊外で行われ、現場で回収されるカートの数や修理台数、実際に使われている車両の燃費や走行距離、カートの素材や重さ、さらには製造拠点からの輸送まで、現実のデータを使って分析されました。