米露の全面戦争で50億人が飢餓に見舞われる
核戦争は、爆発による直接死から、放射能による間接死、それから環境汚染による後遺症まで、あらゆる方法で命を奪います。
研究チームは今回、爆弾が落とされた戦地から、遠く離れた場所に至るまで、核の影響がどの範囲まで及ぶかを探ろうと考えました。
そこで、核戦争後に世界各地の気候がどのように変化し、人々の生活にどれほどの影響が出るかをモデル化しました。
チームは、現在の核保有国(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、インド、パキスタン、北朝鮮)と各国間の緊張関係から、実際に起こりうる6つの戦争シナリオを考案し、分析。
(※ 公表はしていないが、イスラエルも核兵器の保有が広く確実視されている)
その結果、それぞれのシナリオで異なる量の煤(すす)が大気中に放たれ、地球の平均温度が最低1℃〜最大16℃低下すると算出されました。
煤による寒冷化の影響は、10年以上続く可能性があります。
今回、最も小規模のシナリオとされたのはインド・パキスタン間におけるカシミール地方の紛争をきっかけに勃発する核戦争です。
本当に勃発した場合、ここでどれほどの核兵器が使用されるかは不明ですが、もし100発使われたなら、直接的な死者数は2700万人に達すると試算されました。
また、核兵器の数によって、500万〜4700万トンの煤が大気中に放たれ、上空を覆うと予想されています。
さらに、最大規模になると予測されるのはアメリカ・ロシア間の全面戦争では、約1億5000万トンの煤が発生し、地球規模で広がると考えられます。
そうなると、映画『ブレードランナー』や『マトリックス』で描かれたように、暗闇に閉ざされた空と酸性雨が降りしきることになるでしょう。
当然ながら、煤による寒冷化で作物は育たなくなり、放射能汚染により、農業や漁業に大きな被害が出ると予測されます。
そこでチームは、国際連合食糧農業機関(FAO)のデータを使って、核戦争後の農作物の収穫量と漁獲量の減少が、人々の栄養状態にどのような影響を及ぼすかを計算しました。
本研究では、家畜用の作物を人用に回したり、バイオ燃料用の作物(トウモロコシやナタネ)を食用に再利用して、フードロスを削減することを想定しています。
また、各国が食料の輸出をやめて、自国民を養うために、国際貿易が停止すると仮定しました。
その結果、インド・パキスタン間の核戦争で500万トンの煤が発生した場合、世界全体の食物生産量は、戦後5年間で7%減少すると試算されました。
7%の減少ですと、戦後2年間で約2億5500万人が栄養不足で死亡し、全体では約20億人が食料確保が困難になると考えられます。
そして、最悪のシナリオである米ロの戦争であれば、戦後3〜4年間で、食物生産量が90%低下し、50億人が食糧難に陥ると推定されました。
では、実際に核戦争が勃発してしまった場合、最も被害が少なく、安全な場所はどこになるのでしょうか?